2021 Fiscal Year Research-status Report
マルコフ過程の経路及びその加法汎関数の大域的性質とその安定性
Project/Area Number |
19K03552
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
上村 稔大 関西大学, システム理工学部, 教授 (30285332)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富崎 松代 奈良女子大学, その他部局等, 名誉教授 (50093977)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 対称ジャンプ拡散過程 / 2-scale 収束 / 均質化問題 / Mosco収束 |
Outline of Annual Research Achievements |
対称なジャンプ拡散過程に対応する正則な対称Dirichlet形式の系列に対する均質化問題について考えた.比較的弱い条件(ジャンプ拡散過程の系列が過渡的であって,拡散係数が一様楕円及び有界条件を満たし,さらにLevy密度の係数が一様に上と下から有界となるという条件)のもとで,対応するDirichlet境界値問題の解の存在,および先験的評価を得ることが出来た.これにより,空間の弱コンパクト性から適当な部分列がDirichlet空間の位相だけでなく,基礎の空間であるL^2空間の位相でもそれぞれ弱収束することがわかった.そこで,これらが部分列を取らずに系列全体として収束するための条件を検討するために,ユークリッド空間の有界な開集合上の対称ジャンプ拡散過程を取り上げた.拡散係数とLevy密度の係数にどのような条件を課すことで上記の結果が得られるかについて,分担者である,富崎松代氏(奈良女子大学名誉教授)と検討を行った.それによると,代表者が行ってきた従来の手法に加えて,今回,偏微分作用素論の研究で開発された手法である 2-scale 収束法を初めて適用することによって,有限次元分布の収束と同値である,Mosco収束を得ることが出来た.さらには,富崎氏の過去の結果を援用することで,ジャンプ拡散過程の緊密性がいえたので,結果として,それらの確率過程としての弱収束を示すことに成功した.この結果は,学術雑誌「Journal of Mathematical Society of Japan」74巻(2022)に発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の一つである「マルコフ過程の経路の安定性」について,一定の条件のもと, ジャンプ拡散過程の系列の弱収束が得られたことで,ある種のマルコフ過程の経路の安定性が確認できた.さらには今回,Dirichlet形式論においてはじめて2-scale収束法を適用したことによって, 偏微分作用素論で発展している手法の確率論への適用可能性を示すことが出来た. これらのことで, 研究はおおむね順調に進展しているといえる.尤も,2-scale収束法を適用するために,拡散係数に対して若干の正則性(連続性)の仮定を課している点が,「当初の計画以上に進展している」という結論に至らない理由となっている.
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」においても述べたが, 2-scale収束法を適用したことにより, 拡散係数に何らかの正則性を課す必要性があった. 最近の研究の方向性では,拡散係数は有界性は仮定されても正則性は課さないで進めていくことが多い. そこで, 均質化問題研究の手法の一つとして知られている Unfolding法を用いることで回避できる可能性があることがわかってきた.今後は,その手法の適用可能性を探っていくことを目指す.
|
Causes of Carryover |
昨年度と同様に, コロナ禍の状況で, 予定されていた研究会(国際研究会を含む)や予定していた研究会が軒並み中止や,online 開催となり, 招聘のための旅費として計上していた分が使用できずに次年度使用額として残ってしまった. 次年度には, 8月に国際ワークショップを企画しており, 可能であれば, 今年度までに招聘予定であった,国内研究者だけではなく, 国外の研究者を招聘をし, その際の招聘旅費として使用することを検討している. 一方で, 9月に欧州で計画されている国際研究会に参加し,発表を行うための出張旅費としても一部使用する計画を立てている.
|