2022 Fiscal Year Research-status Report
マルコフ過程の経路及びその加法汎関数の大域的性質とその安定性
Project/Area Number |
19K03552
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
上村 稔大 関西大学, システム理工学部, 教授 (30285332)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富崎 松代 奈良女子大学, その他部局等, 名誉教授 (50093977)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | Dirichlet 形式 / Hardy 不等式 / Homogenization / 対称安定過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
過渡的で,既約な対称Markov過程で,強Feller性をもつものを考える.このMarkov過程に対応するDirichlet形式を,加藤クラスに属する滑らかの測度により変換した半正定値形式として定義されるシュレーディンガー形式を考えた.このシュレーディンガー形式が正定値となる条件,および対応する拡張されたDirichlet空間の特徴づけを,もとのMarkov過程の臨界性の条件を通して得ることが出来た.その副産物として,指数αをもつ対称安定過程の時間変更過程として,特異な関数によるh-変換過程に対応するDirichlet形式が臨界的となるための条件を得ることが出来た.さらには,シュレーディンガー形式に対するHardy 不等式が成り立つ際の係数の最適性も確認することが出来た.これまでは,偏微分方程式や,その基本解の詳しい性質を確認することにより導出されていたものを,Dirichlet形式の変換論の一般論として確認することが出来た.なお,この結果は,竹田氏との共同研究として,学術雑誌「Transaction of the American Mathematical Society」376巻(2022)において発表した. 一方,2階の楕円型偏微分作用素に,ドリフト項と呼ばれる1階の偏微分作用素や,ポテンシャル項と呼ばれる掛け算作用素を付加したときの均質化問題も考えた.特に,展開法(Unfolding method)と呼ばれる手法を用いることで,係数に必ずしも周期性を仮定することなしに均質化問題を解くことが出来ることが最近判明した. 一部,タイで開催された(zoomによる)研究会で発表を行った.現在,論文としてまとめているところである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「マルコフ過程の経路の安定性」については, 概要においてものべたが,均質化問題の観点において,展開法(Unfolding method)と呼ばれる手法を用いて,マルコフ過程の推移半群そのものの強収束が得られることが判明した.このことは特質すべき事実である.これまでは2-scale収束法を用いて同様の結果を導いていた.この手法では,拡散係数や飛躍係数に対して周期性の仮定をおく必要があるだけではなく,係数に連続性の条件をもおく必要があった.それに対して,展開法では,それらの条件は一定の範囲において外せることから,研究は順調に進展はしている.一方,その結果を論文としてまとめるところまで行っていない点が,「計画以上に進展している」と評価できない理由となっている.
|
Strategy for Future Research Activity |
現在,2-scale法に代わって展開法を用いて,経路あるいはマルコフ過程の汎関数の系列の収束及びその安定性について検討をしている.とくに,収束性については概ねまとまりつつあるので,さしあたっては収束性についての結果をまとめることとする.その上で,収束の安定性や,極限のより詳しい同定についても検討を進めていく.一方,マルコフ過程の加法汎関数に対応する滑らかな測度についても,測度の系列に,対応する収束が言えるかどうかについても併せて検討をすすめる予定である.
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響は,2022年後半は,2021年・2022年前半と比べると少し落ち着いてきたが,2022年8月に開催した国際研究会では,対面で参加いただけた国外研究者はほとんどいなかった.また,対面で参加いただいた国内の研究者の方々でも,多くの方は,ご自身の研究費を使用しての参加だったため,招へいのための旅費として用意した額がほとんど使用できなかった.来年度は,大きい国際研究会などを行うことは今のところ予定していないが,コロナもだいぶ収まってきたことから,小さいワークショップや研究課題に関連した研究会のいくつかを国内で開催する予定を立てている.それらに関連する研究者を招へいするための旅費として,一部使用することを考えている.
|