2021 Fiscal Year Research-status Report
Surface waves in anisotropic elasticity and piezoelectricity, asymptotic analysis and inverse problems
Project/Area Number |
19K03559
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
田沼 一実 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (60217156)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 非等方弾性体 / Rayleigh波 / polarization / 分散 / 圧電体 / Bleustein-Gulyaev波 / perturbation / 逆問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.深さ方向の非斉次性(不均一性)と弱い非等方性とを有する弾性体において,Rayleigh波(亜音速の弾性表面波)のpolarization ratioの分散,すなわち周波数依存について考察した.ここでpolarization ratioとは,Rayleigh波によって励起される境界振幅の,伝播方向成分と境界法線方向成分との比をいう.位相速度の分散と比べてpolarization ratioの分散の方が,非斉次性に対する感度に優れていることがいくつかの数値計算例から予測されてきた.本研究では非等方弾性体における波動方程式の表面波解に対する漸近解析により,polarization ratioの周波数に関する漸近展開式の各項に,深さ方向に非斉次な残留応力がどのように寄与するかをアルゴリズムで表現した.以上の結果を2021年8月の理論応用力学の国際会議ICTAM2020+1にて発表した.今後,波動現象を観測することで弾性体の非斉次性を決定する逆問題において,位相速度の分散の観測に加えて,polarization ratioの分散の観測を提案する数学的素地がつくれたことに重要性が認められる. 2.横等方な圧電体では,圧電テンソルに依存するBleustein-Gulyaev波(BG波)とよばれる表面波が存在する.BarnettとLotheは,非等方弾性体方程式に対するStroh formalismを圧電体方程式に拡張したが,本研究ではそのformalismにおけるBarnett-Lothe tensorの固有値挙動についての命題に,物質定数の正定値性のみを使う証明を与えた.この結果は,BG波が物質定数の摂動下において安定に一意存在することを保証し,BG波速度の摂動公式の正当性を与えることに意義が認められる.海外共同研究者を含む共同研究として,以上の結果を取りまとめ,理論力学の国際誌に投稿する段階に至った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.斉次な非等方弾性体のRayleigh波から励起される境界振幅において,弾性体が直交異方性から摂動を有するときに,polarization ratioの摂動公式の導出を,論文集「Mathematical Methods and Models in Composites, 2nd edition (Imperial College Press)」に投稿中であった.編集の大幅な遅れにより出版日程は未定であるが,印刷前の校正の段階に進むことができた. 2.COVID-19による世界的な感染状況がいまだ収束しないため,海外共同研究者の訪問(アメリカ合衆国,中国)を取り止め,各種学会への対面参加も中止している.これらによる情報伝達の制限のため,研究の進展に若干の遅れが生じている.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.圧電体における表面波存在のための基礎となるBarnett Lotheテンソルの固有値の挙動の証明,および表面波速度の一次摂動公式とその証明を含めた投稿論文に対して,査読との対応を経て改良を行う. 2.Rayleigh波によって励起されるpolarization ratioの分散を,弾性体の非斉次性を決定する逆問題解析へ応用するため,polarization ratioの分散公式のはじめの数項をもちいて分散曲線(周波数対polarization ratioのグラフ)を描く.これとRayleigh波速度の分散曲線(周波数対位相速度のグラフ)とを比較する(順問題).以上2つの分散曲線から,残留応力等の未知パラメターを再構成する逆問題解析の準備を行う. 3.海外渡航が可能となり次第,海外共同研究者の訪問を予定している.
|
Causes of Carryover |
参加予定の国際学会,国内学会がオンラインでの開催となった.感染状況が落ち着き次第,旅費を使用する.また,海外共同研究者の訪問(アメリカ合衆国,中国)を取り止めた.海外渡航が可能となり次第,訪問を予定している.
|