2019 Fiscal Year Research-status Report
表面拡散方程式によって時間発展する曲線・曲面の形状と特異性の解析
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19K03562
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高坂 良史 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (00360967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 克幸 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (40232227)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 進行波解 / 表面拡散方程式 / 閾値型アルゴリズム / Willmore流 |
Outline of Annual Research Achievements |
接触角境界条件をもつ表面拡散方程式に対する進行波解の安定性について研究を行った。これまでの研究で進行波解の存在を示しているので、その安定性を調べるため、非線形4階放物型偏微分方程式の境界値問題として表される接触角境界条件つき表面拡散方程式を進行波解のまわりで線形化し、対応する固有値問題の解析を行った。その結果、変数係数3階線形非斉次常微分方程式を解析することが本質的であることがわかった。現在は得られた3階常微分方程式の境界値問題の解析方法について検討中である。 上記と併行して、表面拡散方程式の閾値型アルゴリズムについて研究を行った。それに向けて、まずはGrzhibovskis-Heintz(2008)やEsedoglu-Ruuth-Tsai(2008)で提唱されているWillmore流の閾値型アルゴリズムについて検証した。これらの論文では正値性をもつ熱核に類する積分核をもとに閾値型アルゴリズムを構成しているが、4階放物型偏微分方程式の解は基本的に正値性をもたないため、正値性をもつ積分核を利用することが適切であるか疑問を有する。実際、これらのアルゴリズムから得られる近似曲面がWillmore流によって動く曲面に収束することは、数学的には厳密に証明されていない。そこで、4階線形放物型偏微分方程式の基本解(この解は正値性をもたない)の時間に関するTaylor展開をもとにWillmore流の閾値型アルゴリズムの構成を試み、その導出に至った。現在は導出したアルゴリズムから得られる近似曲面がWillmore流によって動く曲面に収束することを示すため、その証明方法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
接触角境界条件をもつ表面拡散方程式に対する進行波解の安定性については安定性の判定条件を導出できると考えていたが、得られた線形化方程式には自己共役性がなく、また変数係数が具体的な関数では表されていない3階常微分方程式であるため現段階では適切な解析方法が確立されていない。その結果、解析を進めるためには新たなアイデアが必要となり時間を要する。 閾値型アルゴリズムについては、収束性を示すためには4階放物型偏微分方程式の可解性に対する基礎理論が必要であるが、2階の場合に比べて十分に理論が確立されていない。その結果、研究を進めるためには準備を必要であり時間を要する。 以上が進捗状況がやや遅れていると判断した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
接触角境界条件をもつ表面拡散方程式に対する進行波解の安定性の判定条件を導出するため、変数係数3階線形非斉次常微分方程式の境界値問題の解析を進める。また、安定性の変わり目は、進行波解と境界との接触角をパラメータとした分岐構造と密接に関係していると思われるため、進行波解の分岐解析を行う。 一方、表面拡散方程式に対する進行波解の存在を示した際に適用した手法は、表面拡散方程式に対する自己相似解の存在証明にも適用できると考えられる。自己相似解の場合は方程式に積分(非局所)項が含まれるため解析がより複雑になるが、Mapleを援用した数値計算により、問題に含まれるパラメータと解の形状の関係がある程度予測できている。その考察を踏まえ、自己相似解の存在を数学的に明らかにする。 閾値型のアルゴリズムについては、まずはWillmore流について収束性を数学的に示す。その際、4階放物型偏微分方程式の可解性に対する基礎理論が必要になるため、準備としてその基礎理論を構築する。
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Causes of Carryover |
分担者である石井克幸氏(神戸大学)は、年度末に研究に関する情報収集のため関連する研究集会等への参加を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い参加を予定していた研究集会等が中止になり、年度内に使用することができなかった。感染症の拡大が収まり研究集会等が開催されるようになった際に、関連する研究集会に参加し情報収集するための国内出張の旅費として使用する予定である。
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