2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K03568
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 逸人 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (70571793)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 蔵本モデル / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
蔵本モデルは相互作用する多数の振動子系からなる大自由度力学系であり、同期現象を記述する数理モデルとして最も標準的なものとして知られている。従来は背後にある結合ネットワークの幾何構造(振動子間の相互作用から定義されるグラフ)とダイナミクスの関係は知られていなかった。 そこで本年度の研究においては、非自明な結合ネットワーク上で定義された蔵本モデルのダイナミクスを研究した。これにより、振動子間の結合強度がある転移点を超えると安定な同期状態が分岐して出現することを証明した。ただし、ここでは連続極限が存在するようなネットワークのみを考えており、具体例としてはランダムグラフ、スモールワールド、スケールフリーなどである。 さらに、転移点の値を与える公式、および同期解の形状を具体的に導出したが、それらの中にはネットワークのedge degreeやラプラシアンの固有値のような幾何的特徴量が含まれる。これにより、連続極限が存在する結合ネットワークに対しては、その幾何構造が転移点の値や同期解の形状などのダイナミクスに与える影響が十分に解明されたと言える。 この結果は、望ましい同期状態が安定に存在するためにはネットワーク構造をどのように設計すればよいか、という問いに答えたものになっており、応用上もきわめてインパクトがある。今後は発電所の配電網や脳神経細胞のネットワークの同期現象、多足ロボットの歩行などへの応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した1年目の目標である「ネットワークの幾何的特徴量と蔵本モデルのダイナミクスの関係を明らかにする」は十分に達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した通り、今後は連続極限が存在しないようなネットワーク上の蔵本モデルを考え、そのダイナミクスを研究する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響でいくつか参加予定だった研究集会がキャンセルになったため。翌年度は本年度得られた結果を多くの国際会議で発表したいため、そのための旅費に使用したい。
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