2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K03568
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 逸人 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (70571793)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳神経細胞の同期 / ガンマ波 / 一般化スペクトル理論 / 力学系理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては、主に脳神経の膜電位に関する数理モデルの研究を行った。まず、無数の脳神経細胞がランダムネットワーク上で相互作用している数理モデルを構築した。おのおのの脳神経細胞の膜電位は時間周期的に発火している。発火すると、ニューロンを介してつながっている隣の脳神経細胞の発火をうながす。本研究ではニューロンによって作られるネットワーク構造はランダムネットワークを仮定した。 このような数理モデルを数学的に解析することで、どのような条件のもと、膜電位の同期がおき、記憶・認知にかかわる脳波の1つであるガンマ波が安定に出現するかを導出した。 その結果、脳神経細胞の数とその間のニューロンの数で決まる、ネットワークの複雑さがある中間的な値のときにのみ同期が起き、ガンマ波が生じることが分かった。これは、ニューロンの数は少なすぎても多すぎても脳のパフォーマンスは落ちることを示している。これは、乳児期に急激に増加したニューロンが、幼児期から不要な部分が減っていく「刈り込み現象」と一致しており、この現象を数学的に厳密に解析した結果としては世界初である。 解析においては、力学系理論と一般化スペクトル理論を用いた。一般化スペクトル理論は蔵本モデルの同期現象の解析のために、本研究者が開発した数学理論であり、極めてオリジナリティの高い研究手法である。一般化スペクトル理論を用いると、数理モデルから得られる線形作用素の固有値が、パラメータを動かすことで2回虚軸をまたぐことが証明できるため、そのパラメータが中間的な値のときのみガンマ波が存在することが示される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、脳神経細胞の数理モデルの解析に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究では、主に抑制性の脳神経細胞のみを含む数理モデルの解析を行った。しかし実際の脳では抑制性と興奮性の両方の細胞が相互作用をしているため、それを表す数理モデルを構築し、解析する。
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Causes of Carryover |
ドイツで行われる国際会議に招待されていたが、コロナのため中止になり、その分の旅費に余剰が生じた。次年度は出張できる状況になっていれば国際会議での発表に活用したい。
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