2020 Fiscal Year Research-status Report
The characterizations of dynamical systems using shadowable measures
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19K03578
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
酒井 一博 宇都宮大学, 共同教育学部, 教授 (30205702)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 力学系理論 / 擬軌道尾行性 / 尾行可能測度 / 双曲性 / 占有的分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
fを多様体M上の微分同相写像とし, M上の確率測度全体をM(M)とする。また,f-不変確率測度全体をM_f(M)で,エルゴード的f-不変確率測度全体をM_f~e(M)で表す。本研究では,PS={f:\mu-尾行可能 (\forall \mu \in M(M))}, IS={f:\mu-尾行可能 (\forall \mu \in M_f(M))},そして ES={f:\mu-尾行可能 (\forall \mu \in M_f(M))}を考察対象とし,これらの集合のC~1-位相に関する内点を一様双曲性や非一様双曲性の概念を用いて特徴付ける。 本研究推進のための基盤となる研究成果``Diffeomorphisms with Shadowable Measures"(K. Moriyasu, K. Sakai, N. Sumi)が2018年12月,Axioms; https://doi.org/10.3390/axioms7040093(オープンアクセスジャーナル)に掲載された。これによりPS, ISのC~1-位相における力学的特徴付けは完了している。本年度は,昨年度に引き続き「ESの内点に属する微分同写像の特徴付け」と「尾行可能測度の非一様双曲型力学系への応用」について研究計画に従い研究を推進した。 ESについては,本年度も現時点で有効な進捗は得られていないが,本年度の重要な研究実績の1つに,上記論文において2次元トーラス上に構成した力学系の力学的性質の一般化が挙げられる(Axioms;オープンアクセスジャーナルに掲載)。Filtrationの概念をうまく利用することにより,「尾行性は持たないが,M上のルベーグ測度mが尾行可能測度となる」開集合の存在を,C~1微分同相写像の範疇で示すことができた。力学的性質をルベーグ測度mを用いて表現するためには,一般にC~2の仮定が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ESの特徴付けについてはまだ有効な進捗は得られていないが,本年度はFiltrationの概念をうまく利用することにより,尾行性を持たない力学系のC~1-開集合(Axiom A系)に対し,尾行可能な擬軌道の量を,M上のルベーグ測度mを用いて測ることに成功した(本研究成果は,3月にAxioms;オープンアクセスジャーナルに掲載されている)。力学的性質をルベーグ測度mを用いて表現するためには,一般にC~2の仮定が必要であるが,この結果はC~1微分同相写像についての結果であり,尾行性理論を測度論的視点から推進することの有効性を示すことができた。本年度は,ルベーグ測度mを用いて尾行可能な擬軌道の量を測ることに一定時間を費やした。 一方,熊本大学の鷲見氏とのメールによるやり取りにより,尾行可能不変測度全体の,弱位相に関する内点に属する尾行可能測度を所有する力学系については,その解析に既存の尾行性理論が応用可能であることが明確になっている。このことを踏まえ,本年度はエルゴード的尾行可能測度を対象に同様な応用可能性について一定時間検討を行ってきた。現時点では有効な手立ては得られていないが,2021年度は鷲見氏を訪問することによりエルゴード的尾行可能測度の内点について研究討議を実施し,ESの特徴付けについて研究を推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
ESのC~1-位相についての特徴付けについては有効な進捗は得られていないが,前述のように尾行可能不変測度の弱位相における内点に属する尾行可能測度があるような系については,既存の尾行性理論がその解析に応用可能であることが2020年当初に明確になっている。また,2019年度の研究により,不変な尾行性測度のサポートと尾行性についての関連が解明されている(本研究成果は力学系理論専門誌 Qualitative Theory of Dynamical Systems, Springer に掲載済)。 2020年度以降の第1の目的は,エルゴード的尾行性測度全体のサポートの和集合(これは閉集合となることがわかる)上に占有的分解の存在を示すことである。例えば,占有的分解が存在しないと仮定した場合,C~1-位相で摂動することにより固有値(絶対値)1をもつ周期点の存在が証明できる。それがもし複素固有値であれば,S~1上のダンジョワ写像を周期点の近傍に(局所的に)埋め込むことでエルゴード的測度\mu~eの存在が証明できる。一方,ダンジョワ写像は尾行性を持たないことから\mu~eも尾行可能測度でないことが証明され,矛盾を得ることができる。従って,複素数固有値が存在することの証明が残された主な課題となる。 2021年度においては,2019年度及び2020年度の研究成果を基に,熊本大学の鷲見氏(力学系系のエルゴード理論の専門家)と研究討議を重ねることにより占有的分解の存在を証明するとともに,本研究の成果をとりまとめ,総括する。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)エルゴード論的力学系理論の専門家である鷲見氏(熊本大学)を複数回訪問する予定であったが,2020年末から年度末にかけ,文科省「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン(Plus-DX)事業」への申請作業に直接的に関与したため,また,新型コロナウイルスによる影響のため,熊本出張を取り止めざるを得なかった。
(使用計画)2021年度は,可能であれば前期終了後(夏休み中)と年度末にそれぞれ熊本大学(鷲見氏)への訪問を計画している。Aoki-Moriyasu-Sumi及びPrzytyckiの研究手法の一般化について研究討論を行うとともに,エルゴード測度全体のサポートの和集合の占有的分解の存在及びその双曲性の証明の可能性ついて研究セミナーを実施し,エルゴード論的力学系理論の視点からも支援を頂く。それにより本研究の課題解決に向け,より一層の活性化を図るとともに,本研究の最終とりまとめと総括に取り組む。
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Research Products
(2 results)