2020 Fiscal Year Research-status Report
地球流体方程式に現れる異方性と特異極限問題の数学解析
Project/Area Number |
19K03584
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高田 了 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (50713236)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 回転流体 / Navier-Stokes方程式 / Boussinesq方程式 / 分散型評価 / 特異極限 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,大気や海洋などを代表とする大規模な地球流体において,回転と温度成層が流れの様相に及ぼす影響やその仕組みを,非線形偏微分方程式論の観点から数学的に解明することである. 本年度は,鉛直方向に周期境界条件を課した3次元層状領域において,回転流の周りでの流体の運動を記述するCoriolis力付き非圧縮性Navier-Stokes方程式を対象とし,その初期値問題の適切性と,回転速度を無限大とする特異極限に関して研究を行った.初期値問題に関する先行研究では,Sobolev正則性1をもつ初期速度場に対して,回転速度を十分速くとった場合の時間大域的適切性が知られている.本研究では,異方的な可積分性をもつLebesgue空間を導入し,その空間における線形評価および双線形評価を確立することで,スケール臨界なSobolev正則性1/2をもつ初期速度場に対して,同方程式の時間大域的適切性を証明した.また回転速度を無限大とする特異極限問題に関しては,全空間における先行研究では,同方程式の解である3次元速度ベクトル場が2次元Navier-Stokes方程式の解へ収束することが,任意の有限な時間区間での時空積分ノルムを用いて示されている.本研究では,時間大域的適切性を証明する際に用いた解の分解とエネルギー評価,線形解に対する線形時空積分評価,および実補間論を用いることで,時間無限区間での時空積分ノルムにおいて,同方程式の解が2次元Navier-Stokes方程式の解へ収束することを証明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究成果は,3次元層状領域における回転Navier-Stokes方程式の初期値問題に対して,時間大域的適切性および特異極限問題における解の収束を証明したことである.特に,スケール臨界なSobolev正則性をもつ初期値に対して時間大域的適切性を示し,時間無限区間での時空積分ノルムによる解の収束を証明することに成功した.今回得られた研究手法は,今後の研究課題である成層流体方程式に対する数学解析への展開が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,令和2年度の研究で得られた3次元層状領域における関数不等式,および回転Navier-Stokes方程式の初期値問題に対する時間大域的適切性や特異極限問題の解析手法を応用・発展させ,3次元層状領域のおける成層流体方程式および回転成層流体方程式に対する時間大域的適切性と特異極限問題を考察する.また,全空間における回転Navier-Stokes方程式の解に対する長時間挙動および空間無限遠での漸近挙動に関する研究を行う.回転および回転軸が解の漸近挙動に及ぼす影響を明らかにすることを目標とする.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により,予定していた出張が全て中止となったため差額が生じた.2021年度の研究集会参加および研究打ち合わせのための旅費として使用予定である.
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Research Products
(3 results)