2021 Fiscal Year Research-status Report
変分問題、最適化問題と非線形偏微分方程式の総合的研究
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19K03587
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
倉田 和浩 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (10186489)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 変分問題 / エネルギー最小解 / 逆問題 / パターン形成 / 漸近挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学院生の長田祐輝氏との共同研究で、3波相互作用をもつ非線形シュレディンガー方程式系に付随する変分問題の解の存在、解の漸近挙動、エネルギー漸近展開に関する研究を行った。特にL^2制限変分問題のエネルギー最小解の存在を、ポテンシャルがある種の対称性を持つ場合に、対称再配列手法を用いて証明することに成功した。また、3波相互作用効果の強さを表すパラメータを無限に飛ばしたときのエネルギー漸近展開と対応する極限問題のエネルギー最小解の存在証明を行った。また、L^2制限なしの場合に、ネハリ多様体上での制限付き変分問題のエネルギー最小解に対して、3波相互作用の強さを表すパラメータに閾値が表れ、エネルギー最小解がスカラー状態になるかベクター状態になるか別れることを証明した。これらの成果は、研究論文として国際学術雑誌へ既に掲載された。 また、大学院生の山下龍生氏との共同研究で、磁場シュレディンガー方程式に対する逆問題で、enclosure法を用いて、磁場の効果を考慮しつつ、内部介在物の凸包の決定に関する結果を得た。内部介在物の境界でのロバン境界条件には、デイリクレ条件の場合と比べて特に詳細な解析が必要となる。この成果は研究論文として国内学術雑誌から掲載受理された。 また、メトリックグラフ上でのパターン形成問題の研究をシュナッケンバーグ数理モデルを中心に行ってきたが、さらに、交差拡散数理モデルにおいて、交差拡散パラメータを無限にした際の極限系の導出と、極限系における棲み分け現象をもつ解の構成に関して一定の成果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3波相互作用を持つ非線形シュレディンガー方程式系に付随する定在波解の変分法による存在証明は、スカラー方程式の場合に有効であったスケーリング手法が使えず困難であったが、対称再配列手法がうまく機能することを見出すことができて、困難を克服できた。また、3波相互作用の強さによって、エネルギー最小解の構造に閾値現象が起こることを厳密に証明することができた。磁場シュレディンガー方程式の逆問題において、うまい幾何光学的解を活用することで、内部介在物の凸包を導く公式を確立できたことは一定の成果である。メトリックグラフ上のパターン形成問題に関する研究も一定の進展もあり、さらに継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
3波相互作用を持つ非線形シュレディンガー方程式系に付随する変分問題に関しては、最近、共著者の長田氏により、一般の非対称なポテンシャルを持つ場合にもエネルギー最小解の存在証明がされて、進展があった。今後は、特異摂動問題におけるエネルギー最小解の凝集現象と凝集点の位置の同定を行うことが1つの課題である。磁場シュレディンガー方程式の逆問題に関しては、内部介在物の凸法よりさらに詳しい形状を取り出す公式を探ることが大きな課題であるが、そのためには、別の幾何光学的な解の構成を必要とし、より詳しい評価を得る必要があるので、検討中である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の状況下で、研究集会もほぼすべてオンライン開催形態となり、旅費を使うことができなかった。また、同様に理由で、謝金としての支出も限られた元となった。 今年度は、コロナ禍の状況も改善が期待されるので、研究集会への参加や研究集会および謝金での講師招聘を積極的に行う予定である。
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