2022 Fiscal Year Research-status Report
Mathematical Analysis of Schroedinger equations
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19K03589
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
谷島 賢二 学習院大学, 理学部, 研究員 (80011758)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シュレーディンガー作用素 / シュレーディンガー方程式 / 散乱の波動作用素 / 点相互作用 / 断熱近似理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
シュレーディンガー作用素ならびにシュレーディンガー方程式の数理解析的な研究を行った。とくに 1) シュレーディンガー作用素の散乱理論における波動作用素のルベーグ空間での連続性に関する研究をおこない, 2、3、4次元空間においてシュレーディンガー作用素が連続スペクトルの下端に特異性を持つ場合に、波動作用素が連続となるルベーグ空間の指数を特異性の種類、あるいは零レゾナンス空間の構造によって完全に特徴づけた。これによって、研究代表者が約20年前に研究を提唱し、多くの研究者によって研究されてきたこの問題がほぼ完全に解決された。さらにデンマークならびにイタリアの共同研究者とともに点相互作用をもつシュレーディンガー作用素の波動作用素のルベーグ空間での連続性についても研究し、2次元ならびに3次元空間における当該問題をほぼ解決した。この研究成果は非線形シュレーディンガー方程式の散乱問題の研究に応用されている。 2)モンゴルの共同研究者とともに、点相互作用をもつシュレーディンガー作用素の散乱の波動作用素が通常のポテンシャルをもつシュレーディンガー作用素の波動作用素の適当な極限として得られることを証明した。 3)シュレーディンガー方程式の初期値問題の解の一意存在問題を研究し、方程式が粒子の運動を一意的に成立するための既存の十分条件を、特に粒子が強い磁場の中にある場合に改良した。この研究成果によって時間依存シュレーディンガー方程式の初期値問題の研究の際に前提として必要な解の一意存在問題を考える必要がなくなり、多くの研究者の手助けになることが期待される。 4) モンゴルおよびデンマークの共同研究者とともに可解モデルを使って断熱近似が成立しない explicit な例を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は1993年に発表した論文においてシュレーディンガー作用素の波動作用素のルベーグ空間での有界性の問題を提唱し、当該論文ならびに1995年に発表した論文において3次元以上の奇数次元空間におけるシュレーディンガー作用素が連続スペクトルの下端で特異性を持たない場合にこの問題を解決した。この問題は偶数次元の場合や低次元空間の場合、ならびにシュレーディンガー作用素が連続スペクトルの下端に特異性を持つ場合に、その後約30年にわたって多くの研究者によって研究されてきたが最近まで解決をみなかった。本研究の課題であったこの問題をこの研究期間中にほぼ完全に解決できたのは当初予想した以上であった。またデンマークならびにイタリアの研究者と点相互作用をもつシュレーディンガー作用素に対する対応する問題も解決できた。
磁場が無限遠方で非常に強くなる外部電磁場のなかにある粒子を記述するシュレーディンガー方程式が粒子の dynamics を一意的に生成するための電磁場あるいは中心力場からのポテンシャルに関する条件を著しく改良できたのも予想外であった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)4階のシュレーディンガー作用素の波動作用素のルベーグ空間での有界性の問題を研究する。この場合も作用素が連続スペクトルの下端に特異性を持たない場合は2次元、4次元空間を除いてほぼ解決されているが、特異性を持つ場合は1次元以外は全く未解決である。4階の作用素の連続スペクトルの下端における特異性は、通常のシュレーディンガー作用素の場合と異なってモース型ではないため、より複雑なためである。そこでまず4次元空間の場合を研究し、通常のシュレーディンガー作用素の波動作用素の研究で用いられてきた研究手法が4次元空間の4階シュレーディンガー作用素に対して有効か否かを検証する。
2)時間に依存するポテンシャルをもつシュレーディンガー方程式の初期値問題の解の長時間における挙動を研究する。この時、ポテンシャルの時間依存の仕方の多様性により、問題を一般的に取り扱うのは困難でもある、と同時に興味ある結果を得るのも困難であると考えられる。そこで、時間非依存についで簡単な、時間に関して周期的に依存するポテンシャルをもつシュレーディンガー方程式について研究する。特に解のエネルギーが有限にとどまるか否か、有限にとどまる場合に散乱理論を展開することができるか否かを研究する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症のため多くの研究集会がリモートになるなど、国内外の研究者との直接的な交流が不可能であった。このため予定していた旅費の支出が不可能となったことが次年度使用額が生じた理由である。2023年度にはコロナの収束にともなって研究交流が自由となることが予想されることから、多くの旅費の支出が見込まれる。またlaptop コンピューターの更新を行う予定にしている。
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