2020 Fiscal Year Research-status Report
量子古典対応および量子カオスの観点に基づくグラフの増大列の解析とその応用
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19K03608
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 正顕 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (90525164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 武博 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80409614)
西郷 甲矢人 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (80615154)
杉山 真吾 日本大学, 理工学部, 助手 (70821817)
谷口 哲也 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (90625500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 正則グラフ / 隣接行列 / Kesten分布 / Kesten-McKay分布 / モーメント / Catalan's triangle / カタラン数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は次の結果を得た.(1)正則グラフの隣接行列のレゾルベントに現れる non-backtracking path の個数と関係する行列の成分の主要項を除いた誤差項の(pathの長さに関する)分布を決定した.その応用として,グラフの増大列が固有値に関するある条件を満たすときに,誤差項の極限分布は正規分布となることが得られた(これはある種の中心極限定理的な現象と考えられるが,固有値の間には代数関係があるので単純ではない).またサイクルグラフの場合から確率密度関数の等式が得られた.結果は論文投稿に向けて準備中である. (2)Kesten分布(あるいは Kesten-McKay 分布)は巨大な正則グラフの隣接行列の固有値分布として現れ,また特別な場合は逆正弦則となり,極限をとると半円則となることから重要な分布である.我々は,2つのパラメータをもつ形に一般化された Kesten 分布のモーメントについて,組合せ論的な明示式を与えた.古典的なカタラン数の2通りの一般化として,Catalan's triangle および Shapiro's Catalan triangleがある.我々はモーメントをCatalan's triangle または Shapiro's Catalan triangleで表す等式を得た.このモーメントの2通りの表示はそれぞれ利点があるが,特にShapiro's Catalan triangleとの等式を用いるとモーメントの(次数が増大するときの)漸近式が得られる.関連してEplett(Discrete Math. 25 (1979))によるCatalan数とShapiro's Catalan triangleの関係式の一般化を得た.結果は投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由による.(1)昨年度の研究で行った数値実験と分担者間の議論で予想した,正則グラフの隣接行列のレゾルベントの成分から主要項を除いた誤差項の分布が分かったことで,本科研の課題である隣接行列の固有関数についての新たな知見が得られると期待される.(2)巨大な正則グラフの隣接行列の固有値分布として現れるKesten分布のモーメントの明示式を得た.この結果は正則グラフを含むような非正則グラフの隣接行列の固有値分布への応用が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた結果を以下の問題に適用できないか検討する:(1)グラフの増大列の固有関数の値分布について (2)グラフの熱方程式への応用について (3)伊原ゼータ関数あるいは正則グラフの隣接行列の跡公式の拡張や一般化 (4) グラフ(や圏)上の量子ウォークについて(5)Lubotzky-Phillips-Sarnak のラマヌジャングラフに関する重さ2のカスプ形式の素数べきフーリエ係数の分布について.
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Causes of Carryover |
コロナウィルス(COVID-19)流行の影響で,参加予定であった研究集会が中止またはオンライン研究集会となった.また年4回程度の分担者による対面での打合せも中止となり予定していた旅費が未使用となった.次年度の使用計画は,(1)オンライン研究打合せ等に必要な研究環境整備(PC・タブレット等の購入やZoom契約料),(2)研究発表・研究打合せのための旅費,(3) 数値実験のための数式処理ソフトや計算機使用料により研究費を使い切る予定である.
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Research Products
(1 results)