2021 Fiscal Year Research-status Report
量子古典対応および量子カオスの観点に基づくグラフの増大列の解析とその応用
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19K03608
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 正顕 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (90525164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 武博 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80409614)
西郷 甲矢人 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (80615154)
杉山 真吾 日本大学, 理工学部, 助手 (70821817)
谷口 哲也 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (90625500)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カタラン数 / Kesten分布 / Kesten-McKay分布 / ベーテ格子 / 正則木 / ランダムウォーク / 伊原ゼータ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は次の結果を得た.(1) 我々は,2つのパラメータをもつ形に一般化された Kesten 分布のモーメントについて,組合せ論的な明示式を与えた.我々はモーメントを古典的なカタラン数の2通りの一般化(Catalan's triangle または Shapiro's Catalan triangle)で表す等式を得た.関連してEplett(Discrete Math. 25 (1979))によるCatalan数とShapiro's Catalan triangleの関係式の一般化を得た.また,応用として,Kesten 分布の2k次モーメントの次数2kが発散するときの漸近式を得た. この漸近式の特別な場合として, ベーテ格子(無限正則木)上の閉路の個数の漸近式を得ることができる. これは,Sawyer(1978)が得たベーテ格子上の離散時間ランダムウォークで時刻2kに戻ってくる確率のkが発散するときの漸近式の主要項の係数(Theorem 2 の定数C)を明示的に決定したことになる(参照:S. Sawyer, Isotropic random walks in a tree, Z. Wahrsch. Verw. Gebiete 42 (1978), no. 4, 279-292.). 結果は以下の論文として出版された.
T. Hasegawa and S. Saito, A note on the moments of the Kesten distribution, Discrete Mathematics 344(10), Paper No.112524, 10 pp.
(2) 正則グラフの non-backtracking cycle の個数の主要項を除いた誤差項の分布について, そのモーメント母関数を導いた.応用として,ラマヌジャングラフの増大列がある条件を満たすときに,その誤差項(を頂点数で標準化した変量)の極限分布が正規分布になることを示した.結果については, 代数的組合せ論シンポジウムと日本数学会で発表した. 齋藤 正顕, 「正則グラフにおけるnon-backtracking cycle の個数の誤差項」, 第37回代数的組合せ論シンポジウム報告集, p.61-67.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の結果を用いると, 正則グラフの増大列に関して, その隣接行列のレゾルベントの成分の漸近的な挙動が分かる. 隣接行列の固有関数についての漸近的な振る舞いについての応用が期待される. また, 一般化されたKesten分布のモーメントについては, ベーテ格子のときだけでなく, ベーテ格子に収束するような正則グラフの増大列のサイクルの個数の漸近挙動についても新たな知見をもたらすと期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた結果を以下の問題に適用できないか検討する:(1)グラフの増大列の固有関数の値分布について (2)グラフの熱方程式への応用について (3)伊原ゼータ関数あるいは正則グラフの隣接行列の跡公式の拡張や一般化 (4) グラフ(や圏)上の量子ウォークについて(5)Lubotzky-Phillips-Sarnak のラマヌジャングラフに関する重さ2のカスプ形式のフーリエ係数の挙動について.
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Causes of Carryover |
新型コロナの流行を受けて予定していた対面での研究打ち合わせが出来なかったため,旅費が余った.次年度は対面打ち合わせを実施し使い切る予定である.
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Research Products
(8 results)