2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on the innovative nature of Seki Takakazu's mathematics: centering on his theory of equations
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19K03609
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Research Institution | Yokkaichi University |
Principal Investigator |
小川 束 四日市大学, 関孝和数学研究所, 研究員 (90204081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 光生 四日市大学, 関孝和数学研究所, 研究員 (80053677)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 関孝和 / 朱世傑 / 方程式論 |
Outline of Annual Research Achievements |
イタリア・ボローニャ,中国・上海交通大学における国際研究集会で講演したほか,数学史京都セミナーで中国・朱世傑『四元玉鑑』(1303年)購読(月1回),数学史名古屋セミナー(月2回)で『大成算経』購読を進めた(すべてZoom開催). 関の方程式論を東アジアの数学の中に位置づけるための一視点として,『四元玉鑑』と関孝和との方程式論を比較,考察した.両者の間にはおよそ400年の隔たりがあり,一見するとそれぞれの学問的背景が異なるように見える.しかし,両者とも『九章算術』から『算学啓蒙』(朱世傑,1299年)に至る伝統の上に位置している点では同じである.朱世傑による『四元玉鑑』と『算学啓蒙』とは同一著者によるほぼ同時期の著作であるから,それは当然である.一方,日本に『算学啓蒙』が舶載した時期は明確ではないが,それを16世紀末頃とすると関孝和の最初の発表物である『発微算法』(1674年)までおよそ80年経過している.しかし,その間,日本においては方程式論は格段の発展をしなかったことから,両者とも『九章算術』から『算学啓蒙』に至る伝統の上に位置しているといってもよい. 朱世傑は算盤上に算木を配置することを2次元に拡張し,関はいわゆる未知量の傍書による筆算により整式の扱いを可能にした.傍書の片鱗は『算学啓蒙』にすでに見えるが,朱世傑はそれを今日の整式のような筆算形式に拡張することはせず,あくまでも実際の算木操作を拡張した.それに対して関は算木表現と傍書とを強く結びついた一体のものと捉え,今日の整式に匹敵する筆算表現を確立した.朱世傑と関孝和とにおける未知数消去は優劣においては比較することはできないが,両者の思想は著しく異なっている.関孝和が傍書法による筆算形式を上位に,算木操作を下位に位置づけたのに対し,朱世傑は算木操作を上位に,筆算形式を下位に位置づけたのである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度はコロナ禍のため予定していたイタリアにおける国際会議,京都大学における研究集会への出張はできなかったものの,これらはいずれもZoomなど遠隔形式で開催されたため,研究成果の発表には格段の不備は感じられなかった.しかし,会場などにおいて既知のまたは未知の参加者と交流議論し,情報の交換,意見を聴取をすることはできず,その点に不満が残る結果となった.その一方,当初予定していなかった中国における会議が遠隔形式で開催されることになり,招待されるなど,遠隔形式の恩恵を若干受けることもできた.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き方程式論に関する関孝和の著作の研究を,現在共同で進めている『関孝和全集』(仮題)と平行して進める.また歴史教育,数学教育に携わる教育者に提示するための方策として,資料冊子を用意することも考える. 昨今のCOVID-19蔓延のため,当初予定した国内外への出張は2021年度も困難になる可能性もあるから,中国の研究者との対面交流,研究補完のために考えていた各大学等の図書館への調査は難しいかも知れない.その場合は現在手に入る情報,資料に加えて,これまで諦めていた史料の購入を進めたい.
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Causes of Carryover |
イタリア・ボローニャ,中国・上海で開催される予定だった国際研究集会および国内・京都で月1回開催される数学史京都セミナーなどがCOVID-19のためすべて遠隔となり,現地出張がなくなったため.出張旅費の使用が全くなかったため. 今年度も旅費としての使用を優先予定しておきたいが,COVID-19の感染状況を見て,関係史料の購入も考えておきたい.
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Research Products
(3 results)