2022 Fiscal Year Annual Research Report
構造化個体群ダイナミクスにおける基本再生産数理論の研究
Project/Area Number |
19K03614
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 寿 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (80282531)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 基本再生産数 / 感染症数理モデル / 年齢構造 / 後退分岐 / 免疫ブースト / 異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1] 個体の異質性を考慮したKermack-McKendrickモデルにおいて、基本再生産数、実効再生産数、集団免疫閾値、最終規模等の疫学的基本概念を数学的に厳密に定式化した。またOdo Diekmann(ユトレヒト大)と共同で、再生積分方程式で定式化された異質性を持つKermack--McKendrickモデルを有限次元常微分方程式系に変換する組織的な手順を提案した. [2] 再感染による免疫ブーストを考慮した感染症数理モデルを大桑,國谷両氏との共同研究において開発した。数学的適切性を示し,初期侵入条件,エンデミック定常解の存在条件を検討した。基本再生産数が1を超えるとき、エンデミック定常解の後退分岐がおきる必要十分条件を与えた。 [3] 新型コロナ感染症に関する國谷氏との共同研究において,大量テストと隔離の効果を検討するためのモデルを構成した。数値計算によって,実効再生産数が検査率の下に凸な減少関数であることがわかり、検査率が小さい段階では、検査率上昇が実効再生産数の低下に対して非常に有効であることが示された。 [4] 一般的な時間的変動環境における個体群増殖の閾値条件を与える基本再生産数理論を開発した。錐スペクトル半径の概念によって、稲葉が提起した世代発展作用素のスペクトル半径が,一般時間変動環境における基本再生産数を与えることがわかるが、そこで得られた基本再生産数が、非線形非自律系のゼロ解や周期解の安定性条件を与えることができることを示した。 [5] 大桑健人,國谷紀良との共同研究により,年齢構造化SIRSモデルのエンデミック定常解がR0>1においてのみ現れ,分離混合の仮定の下で|R0-1|が十分に小であれば,前方分岐したエンデミック定常解は局所安定であることを示した。また,R0>1の場合は,基礎的な力学系が定める半流が一様に強パーシステントであることを示した.
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Research Products
(3 results)