2021 Fiscal Year Research-status Report
3成分反応拡散系における余次元2の中心多様体縮約の深化
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19K03618
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池田 榮雄 富山大学, 理学部, 客員教授 (60115128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中心多様体縮約 / Bogdanov-Takens型分岐 / フロントダイナミクス / 3成分反応拡散系 / 特異摂動法 / 3次のJordanブロック型退化 / 進行フロント解 / 進行パルス解 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の4つの事を中心に研究を行った。 1つ目は,複合分岐点近傍でのパルスダイナミクスの解析を行った。特異点での線形化方程式の固有関数などを使わず,進行パルス解の存在,安定性を再考察し,その情報を縮約形に繰り込むことを考えた。解の構成の部分は既に完了しているが,安定性解析において一部未解決部分が残っている。2つ目は,前年度からの継続である退化度の高いBogdanov-Takens型分岐点近傍での縮約方程式の導出及び,係数決定を行うことである。その為には,更なるフロント解の持っている性質が必要になる。すなわち,進行フロント解の加速度の情報を導き出すための特異摂動法による解の展開が必要になる。そこで,新たな手法として時間変数も考慮した接合漸近展開を構築することを考えたが,空間的な接合と時間的な接合の両方を考慮しなければならず,計算量が膨大になり,現在は全体の枠組みを整理しているところである。3つ目は,3種競争拡散系に対して,2種のみ共存し,3種目は0である自明な進行波解から3種共存の進行波解が分岐することを数学的に証明することが出来た。genericな場合とnon-genericの2つの場合に分類し,それぞれに中心多様体縮約を行い,中心多様体上の常微分方程式(ODE)を導出したが,ODEの係数決定はMathematica等を用いた数値計算に頼らざるを得ない。この結果は投稿中である。この部分は研究協力者の栄伸一郎氏(北海道大学),小川知之氏(明治大学)と協力して行った。4つ目は,1種の餌食が捕食者に対して毒性を持つ2種餌食-1捕食者モデルで,捕食者の移動が餌食の移動に比べてかなり早い場合に,特異摂動法を用いて1モード解の存在と安定性解析を行った。この結果は投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた最初の2つの項目に関して,少し遅れ気味である。1つ目のパルス解の安定性解析において,線形化固有値問題を解く過程において導かれた最大固有値を決定する関係式は固有値の連立非線形方程式となり,パルス解の存在条件としての関係式との関係や固有値自身の分布に関してはまだ未解決である。今後数値計算も併用して進めて行きたい。2つ目の項目に関しては時間変数と空間変数の両方に対して接合漸近展開を適用する必要がある。これは全く新しい取り組みであり,新しい理論が構築できる可能性がある。これまでの計算結果を整理して,あせらず一歩一歩進めて行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1つ目のパルス解の安定性解析に関しては,対称モードと非対称モードの2つの摂動に関する不安定化から導かれる固有値があり,それぞれにおいて,最大固有値を決定する関係式は連立の非線形方程式となる。フロントの場合は単独の非線形方程式で決まり,かなり単純であった。分岐問題に関しては,どちらのモードの不安定化が先に出現するかが重要であり,今後数値計算も併用して前進させたいと考えている。2つ目の項目に関しては時間変数と空間変数の両方に対して接合漸近展開を適用する必要がある。これは全く新しい取り組みであり,新しい理論が構築できる可能性がある。これまで行った漸近展開による計算結果をもう一度整理し,時間と空間変数に対する接合条件を導出したい。さらに次年度は,空間非一様媒体上でのサドルノード+ドリフト分岐点近傍でのパルスダイナミクスの解析を行う。この研究の重要テーマである非一様性の影響による解のダイナミクスの変化を考察する。一様な場合に得られたODE は高精度であるので,過去の実績[R2]をもとに固有関数との相互作用を加味した縮約常微分方程式系を導出し,それを解析することにより,多重特異点近傍での非一様性の影響による解のダイナミクスの全体像を明らかにする。この部分もそれぞれの専門性をいかして,研究協力者の栄氏,小川氏と協力して行う。
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Causes of Carryover |
前年度からの繰り越し(66万円)と今年の実質繰り越し(約46万円)は(合計約112万円)全て国内,海外出張予定の旅費である。コロナ感染症の影響で出張が全くできず,Zoom等の双方向のweb会議を用いて研究打合せを行ってはいるが,特に海外の場合は時差等があり難しい状況である。また,海外で開催される恒例の国際研究集会も延期を余儀なくされていて,研究発表も出来ない。コロナに関してはまだ先が見えない状況であるが,研究期間を1年間延長し,国内・国外の移動が容易になれば,計画通りに研究発表,綿密な研究打合せを実施したいと考えている。その分の旅費として約112万円を繰り越した。
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