2019 Fiscal Year Research-status Report
A billiard problem arising from self-propelling particles
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19K03626
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮路 智行 京都大学, 理学研究科, 准教授 (20613342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SINCLAIR Robert 法政大学, 経済学部, 講師 (50423744)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自己駆動粒子 / 数理モデリング / ビリヤード問題 / 力学系 / 微分方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
単一の自己駆動粒子が境界と相互作用することで生じるビリヤード的な運動を研究している.境界から離れたところでは漸近的に等速直線運動し,境界に近づくと境界に衝突せずに進行方向を変え,再び等速直線運動に近づいていく.このとき,入射角より反射角の方が大きくなる.そのような運動が有界領域で繰り返されるとき,どのような軌道が生じるだろうか.水面に浮かぶ樟脳円板の運動など様々な非線形非平衡系の実験や数理モデルで観察される現象を数理的に理解したい.現象を記述する偏微分方程式モデルからその縮約系としての常微分方程式モデル,さらに簡約化した離散モデルといったいくつかの階層の数理モデルを通じて研究を行っている.初年度は,まず常微分方程式モデル(粒子モデル)における反射規則の数理解析を行った.半平面上での粒子モデルの解析により,方程式のパラメータの一つが0であるという仮定のもとで,入射角<反射角が成り立つことを数学的に証明した.この結果は査読付き論文として発表した.やや強い仮定のもとではあるが,力学系の不変多様体の性質から,パラメータが微小な場合にまで緩められる. 一方,離散力学系モデルから常微分方程式モデルへの対応関係を研究する中で,矩形領域における粒子モデルについて,パラメータの取り方によっては,非自明な平衡点の族が生じうることを見出した.パラメータによってはこれが漸近安定となりうる.これらの平衡点は粒子モデルの限界なのか,あるいは実験に何か示唆を与える現象なのか,検討の余地がある. また,樟脳運動の偏微分方程式モデル(Chen-Ei-Mimura, 2009)に対する擬スペクトル法を実装したことにより,これまで研究代表者が使用していた有限要素法より高精度なシミュレーションが可能となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粒子モデル(常微分方程式モデル)における反射規則の性質(入射角よりも反射角が大きくなること)の数学的な証明について一定の成果があった.また,離散モデルと常微分方程式モデルの対応関係に関する研究において常微分方程式モデルに対する新たな知見がえられたことから,おおむね順調に進行しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
円板樟脳運動のモデルとして,現象を観察するスケールに応じて,連続力学系モデル(偏微分方程式,常微分方程式)と離散力学系モデルがある.矩形領域上での軌道に着目すると,常微分方程式モデルと離散力学系モデルが有用であるが,前者から後者への「導出」は数値実験の観察によるものである.離散力学系モデルで現れる挙動のどれだけが常微分方程式モデルで実現されるか同定したい. 宮路は力学系の解析と数値解析によって,偏微分方程式モデルから常微分方程式モデルへの順方向の縮約を再考し,その分岐構造を明らかにする.シンクレアは計算代数や可積分系の観点から逆方向の数理モデリングにアプローチする.各々の分担で研究を進め,随時emailやオンライン会議等で研究打ち合わせを行う.
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Causes of Carryover |
本研究開始となる2019年4月に研究代表者が京都大学へ異動し,新たに担った学内業務の対応でしばらく出張が困難であったため,2019年の間は数学解析・数値シミュレーションによる研究に集中し,emailによる研究打ち合わせを行っていた.年度末には新型コロナウイルス感染症流行のため,感染拡大防止の観点から東京・京都間や各地への往来を自粛せざるを得なくなり,研究打ち合わせ・情報収集・成果発表のための出張が当初の想定よりも少なくなり,次年度使用額が生じた. 2020年度も感染症拡大防止の観点から,出張は極めて困難と予想されるため,オンラインによる研究打ち合わせ・セミナーやオンラインで開催される学会への参加を行える端末・環境の整備に次年度使用額を使用したい.
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Research Products
(2 results)