2019 Fiscal Year Research-status Report
やわらかい組織の上で増殖する細胞系の連続体モデル構築と解析
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19K03629
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 康明 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50455622)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 形態形成 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
やわらかい2次元膜とその上で増殖する細胞の相互作用系のモデル構築に向けて,プロトタイプとなる数理モデルを構築した.細胞が周りの組織との接着によって束縛されつつ増殖していくことで特徴的なパターンが生じる。細胞増殖が周辺組織の変形を促すと同時に、増殖能をもつ細胞の密度分布も周辺組織の変形にともなって変化していくため、増殖細胞の層と周辺組織の間には双方向の相互作用が存在する。したがって形態形成を理解するためには、この双方向の相互作用を考慮した理論的な枠組みが必要である.その最も簡単な例として,まず皮膚における真皮と幹細胞の相互作用による突起パターン形成の問題に適用可能な連続体モデルの導出を行った. 膜の変形が大きくない場合に膜のz方向の変位のみを考え,幹細胞は点粒子として扱うという設定で,次の仮定をおいた.増殖細胞の密度は幹細胞の位置だけでなく膜形状に依存する.膜形状は細胞密度に依存する.幹細胞の位置は細胞密度と膜形状で決まる圧力場の勾配に依存する.以上の仮定に基づいて得られる時間発展方程式を導出し,相互作用関数を決定した. 導出したモデルの数値計算を行い,真皮-幹細胞系の実験と,粒子モデルによるシミュレーションと定性的に一致する結果を得た.さらに幹細胞の個数や細胞の増殖速度、細胞と膜の接着力、膜の弾性などをパラメタとして、連続体モデルがつくる空間構造を数値的に調べた.膜形状とその上の幹細胞の空間分布の両方に関してパターンを分類することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まだプロトタイプではあるが,数理モデルの構築に成功した.表皮幹細胞と真皮形状変形に関する実験結果と定性的に一致する結果が得られ,またパラメータ依存性などが既存の数理モデルによる数値計算結果に整合する結果となっている.また得られた数理モデルも今後の拡張が可能な形であり,研究は順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがい,今回構築した数理モデルの解析をさらにすすめるとともに,膜と幹細胞の接着強度が空間的に変化する場合,また膜が大変形する場合へのモデルの拡張を試みる.そして得られた数理モデルの計算と解析を行う.
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Causes of Carryover |
当初の予定より出張回数が少なかった.またコロナウイルス感染症の流行に伴う学会の中止・出張のキャンセルにより旅費の支出が減少した.今年度は研究発表の機会を増やす予定である.
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Research Products
(2 results)