2021 Fiscal Year Research-status Report
やわらかい組織の上で増殖する細胞系の連続体モデル構築と解析
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19K03629
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 康明 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50455622)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 形態形成 / 分岐 / 数理モデリング / 反応拡散系 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのモデルに修正を加え,基底層と基底膜の接着の相互作用を,幹細胞の位置でデルタ関数的に大きくなるものから,幹細胞の位置にピークをもち連続的に減衰する関数に変更したモデルを考案し,数理モデルを導出した.このモデルの数値計算を行い,以前と同様に幹細胞の位置で上向きの突起が形成されることを示した.このモデルにおいて,接着強度が空間的に一様であっても一様状態が不安定化し,周期的な空間構造が発生することを明らかにした.線形安定性解析を行い,一様解が不安定化する波長と基底膜の物性,基底膜と基底層の接着強度の間の関係を求めた.幹細胞数と膜の弾性に対する相図を作成し,形成される突起の数と形状の分類を行った. 続いて基底層の細胞同士の接着を考慮した数理モデルの構築を行った.細胞密度と圧力の2変数の連続体モデルの解析を行い,細胞密度の変化によって空間一様な状態が不安定化し,周期構造が現れることを示した.細胞の収縮力と細胞密度の相図を示し,空間パターンを生じる細胞密度に上限と下限が存在することを示した.初期細胞密度が周期的に分布している場合,低波数では最終パターンの細胞集団数は波数に一致するが,高波数では一致せず一山の集団が生じることを示した. また基底膜と接着を保ちつつ細胞分裂を繰り返す系の大変形を記述する数理モデルの構築を行った.これまでの数理モデルを,基底膜が塑性変形を伴う場合に拡張し,細胞分裂の力によって膜の大変形を引き起こすような現象をよく記述する結果を得ることに成功した.大変形を扱うことが可能になることで,乾癬のような真皮の形態変化を伴う病態をシミュレーションすることも可能になり,様々な応用が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続いて,基底層と基底膜の接着の相互作用に関する数理モデル,基底層の細胞同士の接着を考慮した数理モデル,基底膜と接着を保ちつつ細胞分裂を繰り返す系の大変形を記述する数理モデルを構築し,数値計算による解析を行うことができている.細胞集団における空間一様状態の不安定化について研究が進んでいる.したがって研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き広範な数値計算を行いこのモデルで生じる空間パターンの分岐構造を調べていく.また基底膜の大変形に対応する連続体のモデル構築を進めていく.
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Causes of Carryover |
学会・研究会の多くがオンラインまたはキャンセルとなり旅費の支出がなかった.今年度は研究発表に伴う旅費の支出を予定している.
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Research Products
(4 results)