2021 Fiscal Year Research-status Report
Simultaneous occurrence of explosion and extinction in spatial evolutionary game for rapid movement of population
Project/Area Number |
19K03641
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
田畑 稔 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70207215)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 人口移動 / 空間進化ゲーム / 解の爆発 / 経済地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要な目的は,数値実験から導かれる予想命題『単連結領域で急激な人口の流出や流入があると,ある部分領域で人口が消滅し,同時に別の部分領域で人口分布が超関数の意味でデルタ関数に収束する(人口消滅と人口爆発の同時発生現象)』を数理統計的計算手法と数値解析的手法を組み合わせて用いて証明することであった.出発点となったのは,Villani (2010年Fields Medal) の研究である.彼は統計学的手法であるエントロピー法を統計力学の非線型偏微分積分方程式であるBoltzmann方程式へ応用し非常に大きな成功を収めた.先ずこの結果の人口移動の数値計算へ応用を試みた.これにより人口密度と賃金密度の統計的係数(エントロピー係数,エントロピー相関係数)を計算し,その評価を元の人口密度と賃金密度に逆問題として適用する数値計算手法を開発することに成功した.この研究を出発点として,前年度に構築することに成功した数値計算アルゴリズムを高速化した.これを用いて人口密度と賃金密度の統計的係数を数値計算し,その評価を元の人口密度と賃金密度に逆問題として適用する数値計算アルゴリズムを不十分ながら高速化することに成功した.この高速化されたアルゴリズムを用いて量的には不十分ながら数値計算を実行することができた.この数値計算結果により予想命題証明の為に,人口密度・賃金密度の統計的係数を数値的に求める評価式を,(数値実験実施数が少なかったため)パラメータ値を制限するという条件付きで,予想することができた.そしてこの評価式を用いて数値計算アルゴリズムをさらに高速化する準備ができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように数値計算アルゴリズム高速化の準備はできた.しかし定理を現実問題に応用する際に重要な数値実験が,コロナ禍のため十分に実施できなかった.そのため数値実験を踏まえた証明方針決定が十分にはできなかった.その結果,証明手法の探索が手詰まりとなってしまった.また同じ理由により,解の爆発の発生と消滅時間の閾値を不十分にしか数値的検証が出来なかった.この閾値の確定は証明方針の決定に大きな役割を果たすことを予想していたため,研究計画自体の遅延を招いた.また人口密度と賃金密度の統計的係数(エントロピー係数,エントロピー相関係数)の数値計算方法のアルゴリズムの高速化にはある程度まで成功した.しかし数値実験が十分ではなかったため,その高速化を十分に行うことが出来なかった.数値実験を行い,アルゴリズムを改良して十分な高速化できたなら,空間特異的に広がる確率密度関数に応用できることが期待できる.これにより逆問題的手法が,統計的係数計算方法の開発に役立てることができる.さらに負冪の特異性を持つ非線型積分作用素の中に別の非線型積分作用素が組み込まれた入れ子構造の二重非線型積分作用素,並びにreplicator方程式の解の評価にも役立てることができる.特にこれらをreplicator方程式の解の挙動が不安定になる0近傍で数値解析的に明らかにすることができたなら,入れ子構造の積分核と負冪の特異性によって起きる解の鋭敏な挙動変化を捉えることができる.このように本年度は重要なカギになるアルゴリズムの準備はできているので,それの高速化を目指しさらに十分な数値実験を目指す.
|
Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍のため2021年度行った数値実験で十分にカバーできなかったパラメータ値について2022年度に数値実験を行う.さらに挙動変化の閾値が不明だったために前年度まで十分に実施できなかったstochastic modelを用いた数値実験を引き続き実施する.その結果を手がかりに,人口密度と賃金密度に逆問題として適用する数値計算手法の統計学的部分を精密化する.これにより人口密度・賃金密度の統計的係数に対する数値計算アルゴリズムの高速化を目指す.その結果を統計的係数の評価(数理統計学)を用いて元の人口密度と賃金密度に逆問題として実際に応用する. これらの最終的な結果を用いて予想命題を証明して論文を執筆する.人口移動シミュレーションを実行して現実社会に応用することが本研究の最終目標であった.そこではパラメータ値の細かな場合分けが必要である.しかし実際はすべての場合に数値計算することは不可能である.そこで予想命題によって漸近挙動が事前に分かるパラメータ値を除外する.残った場合にのみシミュレーションを実行し,数値計算効率を高める予定である.熊本や東北の震災被災地では,急激な資本喪失により労働人口が流出し,その流出した人口は都市部に集中しようとしている.人口動態調査を基礎にして,今後10年間の熊本県と福島県からの流出人口を数値シミュレーションにより予測する.
|
Causes of Carryover |
購入予定であった研究集会報告集の出版が遅れた.購入予定であった書籍の出版が遅れた.新型コロナ蔓延のため出席予定の海外の研究集会がすべてキャンセルになった. 購入できなかった書籍等は出版され次第購入する予定である.出席出来なかった研究集会は開催され次第登録を行い出席する予定である. 数値実験補助のため人件費を支出する予定であったが,コロナ禍のため数値実験を実施することが出来なかった.
|