2019 Fiscal Year Research-status Report
Creation of multilevel model for predicting self-organization of bacterial population
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19K03645
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田崎 創平 京都大学, 高等研究院, 特定助教 (50713020)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 枯草菌 / バイオフィルム / ライフサイクル / 数理モデル / 遺伝子制御ネットワーク / 細胞タイプ制御 / マルチレベルモデル / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌集団の自己組織化のマルチレベル数理モデルを求めて、一細胞の状態制御、細胞集団動力学、細胞密度場、という3つのレベルの数理モデルを構築し、そしてそれらを結ぶマルチレベルモデリングの方法論を構築することを目指している。異なる細胞状態の制御が関わっていて、かつマクロな秩序形成と密接に結びついているものとして、細菌バイオフィルムのライフサイクル生成を研究した。このライフサイクルの本質をもつ単純なモデルとして、枯草菌の同心円状コロニーの形成を調べた。枯草菌は多様な細胞タイプを取ることができるが、その中でも、運動タイプと基質産生タイプがコロニー構築において交互に支配的になり、ライフサイクルが生成される。そこで本研究では、特にこれらの細胞タイプ間の制御と関連する遺伝子群の制御ネットワークおよびそのダイナミクスを記述する数理モデルを構築した。数理モデル解析と培養実験、遺伝子発現解析を組み合わせて研究を進めたところ、環境pHをはじめとする環境条件をどのように入力し、細胞タイプ制御に反映させているのかを明らかにした。結果として、一細胞の状態制御の基礎モデルが構築できた。さらに、マルチレベルアプローチとして、同心円状コロニー形成の数理モデルをいくつか試作した。異なる細胞タイプが組み込まれたこの数理モデルは、これまでに観察されてきた枯草菌コロニーの形成を統一的に再現するポテンシャルをもっている。この研究は、不均一な細胞集団のマルチモデルな数理モデリングを切り拓き、また、枯草菌コロニー形成における未解決問題を解いた点でも重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の本質的な点を集約した研究対象である、バイオフィルムのライフサイクル生成、そしてその単純モデルである同心円状コロニー形成の問題に着眼したことで、出発点である一細胞の状態制御の数理モデルの基礎を構築しただけでなく、巨視的コロニー形態のモデル、そしてマルチレベルモデリングまで切り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
枯草菌コロニー形成の未解決問題の解明について研究発表を進めたい。また、これまで一細胞の細胞タイプ制御の数理モデルに関して、運動タイプと基質産生タイプの2タイプしか考慮していなかった。そこでこの数理モデルを拡張する。細胞タイプ制御と関わるより多くの遺伝子群の抽出および遺伝子制御ネットワーク推定、動態モデル推定を行う。これにより細胞多様性を実現し、バイオフィルム形成機構の研究につなげる。その後、不均一な細胞集団のマルチレベルモデリングの理論についての整備を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度の予算のうち次年度使用額は1割未満である。次年度の方が有効活用できると考えている。具体的には、当初計画における当該年度の論文掲載料の分が、次年度提出の論文で使用される。この点を除けば当初計画の通りであり、実験関連の消耗品、研究成果発表・情報収集のための旅費、その他、論文投稿料・学会参加費で使用する。
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Research Products
(18 results)