2021 Fiscal Year Research-status Report
Creation of multilevel model for predicting self-organization of bacterial population
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19K03645
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田崎 創平 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (50713020)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 枯草菌 / コロニーパターン / バイオフィルム / ライフサイクル / 数理モデル / 遺伝子制御ネットワーク / マルチレベルモデル / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌集団の自己組織化のマルチレベル数理モデルを求めて、一細胞の状態制御、細胞集団動力学、細胞密度場、という3つのレベルの数理モデルを構築し、そしてそれらを結ぶマルチレベルモデリングの方法論を構築することを目指している。前年度から引き続き、異なる細胞状態の制御が関わっていて、かつマクロな秩序形成と密接に結びついているものとして、枯草菌の同心円状コロニーの形成を調べた。枯草菌は多様な細胞タイプを取ることができるが、その中でも、運動タイプと基質産生タイプがコロニー構築において交互に支配的になり、ライフサイクルが生成される。そこで本研究では、特にこれらの細胞タイプ間の制御と関連する遺伝子群の制御ネットワークおよびそのダイナミクスを記述する数理モデルを構築してきた。そしてマルチレベルアプローチとして、細胞レベルと組織レベルをつなぐ、新しい枠組みの数理モデルを構築してきた。マルチレベルな数理モデルの構築は一定の確立された理論がないため、モデルの構造にはバリエーションが考えられ、今年度は複数のモデルを構成し、数値実験にて検証を行った。それぞれの利点と問題点が明らかになりつつある。今年度はさらに、これまで構成してきた細胞・組織レベルをまたぐマルチレベル数理モデルの実証も兼ねて、他の系への応用を行った。ひとつは血管新生の系で、血管内皮細胞の運動方程式と周囲微小環境・血管形態のフェーズフィールドを組み合わせた数理モデルを提案した。これにより細胞混合などの細胞レベルの現象とマクロな血管網形成が同時に解析できるようになった。さらに、ニワトリ胚中胚葉細胞の集団運動系やショウジョウバエを用いた腸管上皮の細胞多様性系の研究等でも数理モデル解析を行うなど、様々な相互作用する多種多細胞の系の数理解析基盤ができつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の本質的な点を集約した研究対象である、バイオフィルムのライフサイクル生成に関する同心円状コロニー形成の数理モデルは複数のバリエーションが構成された。さらに、本研究課題の第一目標であるマルチレベルな数理モデリングにおいて、これまで細胞・組織のマルチレベル数理モデルを構成してきたが、数理モデルの枠組みとしてまとまってきたので、この枠組みの他の系への応用も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞レベルと組織レベルをつなぐマルチレベルモデル法を構築してきたが、異なるレベルをまたぐ数理モデルの枠組みとしてはいくつものバリエーションが考えられる。これまでに複数のモデルを構成し、数値的に検証を行うとともに、枯草菌のコロニー組織以外にも応用を行ってきたが、このマルチレベル数理モデルの枠組みの応用範囲の広さは計り知れない。今後も引き続き数理モデルの複数のバリエーションを検討しながら、枯草菌コロニーを中心に、細胞・組織レベルの様々な生命現象への応用を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度は出張がほとんどなくなり、旅費の使用は最小限となった。また、テレワークによる解析研究が主となったため、消耗品費も激減した。次年度は延期した研究打ち合わせのための旅費や開発した数理モデルのための新規実験計画の実施による消耗品費・備品費で使用する。
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Research Products
(8 results)