2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K03649
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉見 一慶 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (10586910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本山 裕一 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (30816731)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 解析接続 / スパースモデリング / 交差検証 / 虚時間グリーン関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
有効模型の解析を行う強力な手法の一つである量子モンテカルロ法では,磁化率や比熱などの静的物理量に関する実験との詳細比較が可能である一方,電子状態を知るためのスペクトル解析などの動的物理量に関しては,高精度な解析接続を可能とする決定的手法がないため,実験との詳細な比較は難しい状況にある.解析接続結果の精度を定量化し信頼性を評価することで,精度保証された理論計算と実験との比較を実現し,高精度な予測が可能な機能物質設計ツール構築に向けた技術基盤を確立することが本研究の目的である. この目的の遂行に向けて、本年度(初年度)は以下の成果を得た: (1) 解析接続における統計誤差の増幅の抑制:スパースモデリングを用いた解析接続法に,低エネルギーの励起情報を取り入れた解析機能と, 虚時間データの相関 (共分散) 情報からの実時間データ情報抽出機能を実装した。前者についてはスパースモデリングを用いた解析接続法を用いた際に現れる低エネルギー部で人工的に現れる振動を抑制することに成功した。後者については, 虚時間データ構造の持ち方など実践に向けた検証を進めた。 (2) 虚時間データの解析接続結果に対する情報理論を用いた精度検証:交差検証を大型計算機で行えるように拡張したプログラムの開発を行った. また, 実験データを対象とした検証を行い速度改善などを実施した. (3) ソフトウェア開発・普及活動:(a) スパースモデリングを用いた解析接続法を実装したソフトウェアSpMに関する論文誌の出版 (b) スパースモデリングの多体問題への応用に関する論文氏の出版.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析接続を高精度化する手法の開発について、当初予定していたスパースモデリングを用いた解析接続法に、低エネルギーの励起情報を取り入れた解析機能と、虚時間データの相関 (共分散) 情報からの実時間データ情報抽出機能の実装を当初計画通り完了した。また、様々な応用が期待される交差検証プログラムを、大型計算機向けに設計・開発を行うこともできた。さらに、スパースモデリングを用いた解析接続手法に関する普及活動も論文出版を中心に着実に進んでいる。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
交差検証プログラムとスパースモデリングの機能を組み合わせ、スパースモデリングの精度これまで経験的に行われていた解析接続の精度検証を,バイアスなく実施できるための基礎プログラムを開発する. また、並行して開発している動的平均場近似用ソフトウェア DCore および量子モンテカルロソフトウェア DSQSSと本ソフトウェアとの接続を行う.これにより,現実物質を含む様々な系を対象にした解析を円滑に行えるようにする. 普及活動については、新規に開発した手法に関する論文出版を行うとともに、新機能として既存ソフトウェアに組み込んだバージョンを公開する。
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Causes of Carryover |
今年度購入予定であったクラスタは、予算が削減された関係上、当初予定していたクラスタの購入が難しくなった。しかしながら、今年度はアルゴリズム構築およびソフトウェア開発を中心に進めたため、既存の計算環境を活用することで研究を進めることができた。次年度からは交差検証を活用した虚時間データの精度検証に進む。本解析ではデータの分割数毎に解析接続の計算を行う必要があり、大規模計算機の利用が必須となる。計算には東京大学物性研究所スーパーコンピュータの全国共同利用を活用する予定であるが, 次年度はスーパーコンピュータのリプレースなどがあり使用制限がある。一方で、昨年度末はコロナウィルスの影響もあり国際会議などでの発表を行うことができなかった。そこで、開発の効率化・生産性をあげるため、今年度分の予算を繰越し、ある程度の規模の計算が可能な高性能な計算機(MacBookProなど)を研究者・分担者で次年度新規購入することにした。
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