2021 Fiscal Year Research-status Report
Statistical mechanics of nonlinear evolutionary dynamics with a large degree of freedom
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19K03650
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
時田 恵一郎 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (00263195)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統計力学 / 進化ダイナミクス / 生態系 / 種個体数分布 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、物理学、生物学、情報科学、社会科学、経済学などの様々な分野で研究されている巨大システムに注目し、多種多数の主体が複雑な相互作用を介して影響し合いながらその個体数などを変動させ時間発展する大自由度非線形進化力学系の巨視的性質を、統計力学的手法 や計算物理学的手法を用いて解明することである。これは最近大きな問題となっているCOVID-19パンデミックの対策を考えるうえでも重要な情報を与える基礎研究であると考えられる。具体的には、レプリカ法や生成汎関数などこれまで申請者が進化力学系に適用してきた数理物理学的手法,さらには量子多体系の方法論を適用することにより、生態系、免疫系、経済システムなどの様々な現実の進化力学系に共通に見出されてきた多様性のパターン、種個体数分布、種数面積関係などの巨視的なパターンが生み出されるメカニズム、特に環境や種などの性質を表すパラメータに対する依存性を明らかにしつつある。2021年度においては、集団遺伝学,特に中立突然変異に関する「飛び石」モデルに類似の古典的確率過程に対して,量子多体系で発展してきた数理的手法を適用し,種個体数分布などの巨視的パターンのパラメータ依存性を明らかにし、その成果を「2021年日本数理生物学会」で口頭発表した。さらに,食物網における種個体数分布,特に,巨大なメタ群集の中の局所群集における種個体数分布のサンプリング理論を構築し,その成果を「第69回日本生態学会」で口頭発表した.これらの成果について国際論文誌への発表の準備も鋭意進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度においても、レプリカ法や生成汎関数などこれまで申請者が進化力学系に適用してきた数理物理学的手法,さらには量子多体系の方法論を適用することにより、生態系、免疫系、経済システムなどの様々な現実の進化力学系に共通に見出されてきた多様性のパターン、種個体数分布、種数面積関係などの巨視的なパターンが生み出されるメカニズム、特に環境や種などの性質を表すパラメータに対する依存性を明らかにしつつある。さらに,集団遺伝学,特に中立突然変異に関する「飛び石」モデルに類似の古典的確率過程に対して,量子多体系で発展してきた数理的手法を適用し,種個体数分布などの巨視的パターンのパラメータ依存性を明らかにし、その成果を「2021年日本数理生物学会」で口頭発表した。さらに,食物網における種個体数分布,特に,巨大なメタ群集の中の局所群集における種個体数分布のサンプリング理論を構築し,その成果を「第69回日本生態学会」で口頭発表した.上記の成果を国際論文誌に投稿する準備を進めている。また、相互作用が進化的に時間変動する系への理論の拡張を行い、より現実的な生物進化における形質の変化を考慮した巨視的パターンのパラメータ依存性や相転移の条件 ・性質を明らかにするという研究目標についても着実に研究を進めている。その意味では計画から大きな研究の遅れは生じていないが、2020年に入ってからは、COVID-19パンデミックの影響で、海外の実証研究グループとの共同研究に支障をきたしており、実証データを用いた理論の検証、 精密化を進め、環境評価・保全、社会・経済システムにおける格差是正といった目標達成にはより一層の工夫と努力が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、食物網、ゼロサムゲームに対応するランダム反対称相互作用をもつレプリケーター方程式についての非平衡統計力学的研究を進め、種個体数分布などの巨視的パターンのパラメータ依存性や相転移の条件・性質について調べ、国際会議等で発表しつつ国内外の研究者と情報交換もしながら研究を深化させ、国際論文誌に投稿する準備を進める。同時に,「飛び石モデル」に対する種個体数分布の理論研究を進め,オンライン国際会議等で発表,国際論文誌に投稿する準備も進める.さらに、相互作用が進化的に時間変動する系への理論の拡張についても議論を深め、より現実的な生物進化における形質の変化を考慮した巨視的パターンのパラメータ依存性や相転移の条件 ・性質を明らかにしていく。2021年もCOVID-19パンデミックの影響で、海外の実証研究グループとの共同研究に支障をきたしているが、オンライン会議システムを利用したリモート共同研究体制を確立して、国際共同研究も進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で予定していた出張旅費(国内,国外)を使用することができなかった.
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