2019 Fiscal Year Research-status Report
Hierarchical data mining toward molecular dynamics of biomolecules and allication to pharmacy
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19K03653
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
戸田 幹人 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (70197896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森藤 紳哉 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (30273832)
鎌田 真由美 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70749077)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体分子の機能発現 / 時系列解析 / 次元縮約 / 薬理の分子機構 / 非平衡ダイナミクス / 集団運動 / 非線形動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生体分子に対する分子動力学シミュレーションを中心的な対象として、階層的なデータマイニングの手法を発展させ、生体機能の分子的起源に関して、分子内非平衡性に基く動力学な見方を発展させることである。数理的な手法の面では特に、ウェーブレット変換の拡張と、次元縮約との組み合わせによって、新たな解析手法を発展させることを課題とする。本年度はこの面に関する成果として、ウェーブレット主成分解析という新たな解析手法を開発したことが挙げられる。この手法では、時々刻々と変化する集団運動を抽出するために、まず、ウェーブレット変換で得られる多自由度系のスペクトルに対して、時間窓による移動平均によって分散・共分散行列を求める。この行列は、自由度と周波数成分を組み合わせた複合添字を持っており、集団運動に寄与する自由度および周波数成分を一挙に抽出できる。これが本手法の新規性の第1の点である。次に、この分散・共分散行列の固有値・固有ベクトルの時間変化に見られる特徴を調べる。一般に非平衡現象では、分散・共分散行列の固有値・固有ベクトルは、緩やかな時間変化を示す時間帯と、不連続的な遷移を示す時刻がある。後者の不連続的な時間変化では、第1固有値と第2固有値の時間変化にレベル反発が生じ、第1固有ベクトルと第2固有ベクトルの入れ替わりが起きることが予想される。これは物理や化学において、非断熱遷移における量子状態の入れ替わりや、分子の形成における結合性軌道と反結合性軌道の入れ替わりに見られる現象からアイデアを得たものである。しかしデータサイエンスでは、このアイデアは従来あまり応用されていない。このアイデアの応用が、本手法の新規性の第2の点である。本年度はこの手法を、生体分子のような大自由度系へのテストケースとして、多自由度ハミルトン写像のモデル系を対象に検証し、その有効性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では以下の3点を目的としている。第1に、生体分子の分子動力学計算で得られる大規模時系列データに対して、階層的集団運動を抽出する新たなデータマイングを開拓する。第2に、生体分子の反応過程で見られる多彩な現象に適用できるように、階層的データマイニングにおける新たな数理解析の手法を発展させる。第3に、階層的データマイニングの手法を、具体的に分子標的薬における薬理に応用し、薬効発現の動力学的機構を解明する。本年度は3点の目標の内から特に第1を主要な課題とし、ウェーブレット主成分解析という新たな解析手法の開発と、テストケースに対する検証を行った。その結果、ウェーブレット主成分解析の有効性が示されている。また第2の点に関しては、ウェーブレット変換のような時系列解析の手法に関して、全世界的な研究の現状に対するサーベイを行っている。時系列解析に用いる関数系については、これまで様々な提言がされており、その中から有望なアイデアを得ている。このように研究の進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況で書いたように、時系列解析と次元縮約を組み合わせた手法として、ウェーブレット主成分解析の有効性の有効性を既に検証している。これを踏まえて以下の3点を、今後の方向性とする。第1に手法の発展である。時系列解析の手法としてのウェーブレット変換に関しては、そのさらなる発展とともに、様々な他の関数系を応用して有効性を検証する。次元縮約に関しても、統計科学における近年の展開を参考にしながら、新たな方向性を目指す。第2に数理科学としての展開である。データ解析の新たな手法の有効性を数値計算で実証するとともに、数理科学の立場から、実験的に示した有効性を保証する理論を発展させる。第3に生体分子への応用である。テストケースとしての多自由度ハミルトン系から、ポリペプチドなど比較的小さな生体分子への応用、さらにリガンドバインドなど薬理の機構解明へ応用していく。
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Causes of Carryover |
計算機購入の予算を用意していたが、実際に購入する時点で、当該機種の値段が予算案作成時より値下がりしており、その差額が残った。次年度には、計算機の周辺機器の購入に使用する。
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Research Products
(8 results)