2019 Fiscal Year Research-status Report
人口移動のダイナミクスと人口分布の形成に対するモデル化と解析
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19K03656
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山本 健 琉球大学, 理学部, 講師 (00634693)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 確率モデル / 確率過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会現象における確率・統計的な側面の理論解析をおこなった。人間の感覚を定量的に表すウェーバー・フェヒナーの法則に基づく対数正規分布の生成について検討した。このモデルの適用例として、アニメーションなどに登場するキャラクターのサイズ分布の分析をおこなった。いくつかの作品に共通してキャラクターの身長と体重はおおむね対数正規分布にしたがうという結果が得られ、その理論的な説明を提案した。さらに、キャラクターの身長と体重の相関について、現実の生物と比較して分析を試みた。対数正規分布のパラメータに関するスケーリング則から空間次元が推定できることを示した。架空のキャラクターに対する次元は3次元よりも小さく、キャラクターのサイズは現実の生物を模倣しているわけではないと推測された。これらの研究結果は、物理学分野の査読つき英文学術論文誌に掲載された。 これ以外にも、漢字の画数と線の長さにおいてベキ乗則がみられることを発見し、フラクタル性との関係を理論的に明らかにした。さらに、漢字の画数と線の長さの各々がベキ分布的な確率分布にしたがい、そのベキ指数の間に成り立つスケーリング関係の解析をおこなった。この研究成果は、物理学分野の査読つき英文学術論文誌に掲載された。その他、球技におけるパス回しの解析や枝分かれ構造に関する確率論的な性質(中心極限定理および大偏差原理)の証明に関する成果が得られた。 以上のように、いくつかの現象に対して、人間の心理効果とその普遍性について確率論に基づいて数理物理学的な記述や理解を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究成果により、理論的に重要な知見が得られている。また、「今後の研究の推進方策」に記すように、可変な下限値をもつ乗算的確率過程によるモデル化という有望な着想を得た。研究の方向性の選択肢が増えたことは、研究内容の充実につながるものと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
確率変数の乗算によって時間発展する確率過程(乗算的確率過程)において、下限値を設定することでベキ分布が導かれることが知られている。このベキ分布と人口の確率分布が比較されることがある。申請者は、このモデルにおいて下限値を可変に拡張することにより、実際の人口の分布に近い確率分布が得られるのではないかと着想した。今後は、この確率モデルの定式化および解析を進めるとともに、提案モデルを種々の社会現象に応用できないかも検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は理論研究を中心に進めたため、計算機の購入は見送った。さらに、新型コロナウィルス感染症のため、年度末の学会および研究会がのきなみ中止になった。 次年度使用額は計算機の購入および別の出張旅費として利用する計画であるが、コロナウィルスの今後の動向が不透明であるため、明確な使用計画は立てにくいのが現状である。旅費の代わりに物品の購入に充てる可能性もある。
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Research Products
(9 results)