2020 Fiscal Year Research-status Report
人口移動のダイナミクスと人口分布の形成に対するモデル化と解析
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19K03656
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山本 健 琉球大学, 理学部, 准教授 (00634693)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会物理学 / 確率過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会現象における確率・統計的な性質に対するモデル化および理論解析をおこなった。 社会現象にみられる裾の重い確率分布の生成メカニズムの1つに、確率変数の乗算性がある。最も単純な乗算的確率過程からは対数正規分布が導かれ、下限値を設定することでベキ分布が導かれるなどの性質が知られている。今年度は、「可変下限値」をもつ乗算的確率過程の解析をおこない、分布関数を導出することができた。この確率過程は企業における費用のデータに端を発するモデルであるが、得られた分布関数は様々な社会データにフィッティングが可能であるという断片的な結果も得ることができた。この結果は社会物理学の研究会で口頭発表をし、現在、論文の投稿に向けた準備を進めているところである。今後は、分布関数の性質をさらに深く分析するとともに、多様な実データとの比較の研究を進めることを考えている。 さらに、球技におけるパス回しネットワークの時間発展を解析した論文が、物理学分野の査読付き英文学術誌に掲載された。パスの優先的選択の効果を取り入れたモデルの構築と解析をおこない、サッカー、バスケットボールおよびラグビーのデータと比較した。このモデルで導入した優先的選択の強さを表すパラメータの大小によって、チームのパス回しの戦略や球技のパス回しの特徴を定量的に表すことができた。今後は、1つの球技(おそらくサッカー)について、分析する試合数を増やし、パラメータの統計的な性質や実データとモデルのずれなどについて系統的な研究を実施する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
可変下限値を設定した乗算的確率過程の解析は、研究計画の段階では想定していなかった成果である。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で会議、学会や研究会のいくつかが中止になり、成果発表の機会は不十分であった。以上を総合し、研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、今年度に得られた成果である可変下限値を設定した乗算的確率過程の解析結果を論文として出版されることを目標とする。さらに、これまでに得られた理論的な結果を人口のデータと比較し、理論の妥当性を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、学会等が中止またはオンライン開催となったため、旅費を使用することがなかった。次年度も感染の状況の見通しが不透明であり、旅費の見積もりが困難である。出張が中止となった場合は、主に図書などの物品に充てたいと考えている。
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Research Products
(4 results)