2020 Fiscal Year Research-status Report
測定の操作的性質に基づく量子古典混合系の数理構造の解明とその応用
Project/Area Number |
19K03658
|
Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
中平 健治 玉川大学, 量子情報科学研究所, 教授 (90804005)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 量子論 / 量子情報理論 / 操作的確率論 / 量子プロセス識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
全体計画として,(1)操作的な原理のみを用いた広義量子論の数学的構造の導出,(2)量子論に関する各種の操作的な性質の解明,の大きく二つのテーマを考えており,本年度では(2)を実施した。 具体的には,有限個の量子プロセスをできるだけ高い正解率で識別する問題である量子プロセス識別問題に取り組んだ。量子プロセスとは量子状態・量子測定・量子チャネル・量子スーパーチャネル等を含んだ広い概念のことである。このため,量子プロセス識別問題は量子状態や量子チャネルを識別する問題を含んだ汎用的な問題であるとみなせる。本問題は半正定値計画問題として定式化できることが知られているが,その計算量は系の次元に対して指数関数的に増加するため,系の次元が大きい場合には解くことが困難である。 本年度では,量子プロセス識別問題における最大正解率の上界と下界を求める方法を提案した。これらの値を効率的に求めるために,量子論より汎用的でかつ直観的な理解が可能な理論である操作的確率論を用い,昨年度の研究で明らかにした量子論の操作的な性質を活用している。プロセス識別問題の特別な場合であるチャネル識別問題においては,上界・下界を求めるための本研究とは別のアプローチが本研究推進中(2020年)に提案されたが,少なくとも幾つかのケースにおいては提案法のほうが良好な性能が得られることを理論解析および数値実験により明らかにした。提案法は有限次元系の任意の量子プロセス識別問題に適用できる(すなわち量子チャネル以外のプロセスの識別にも適用できる)ことが特徴的である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では量子チャネル識別問題に取り組む予定であったが,昨年度に明らかにした量子論の数学的構造や操作的な性質を活用すればより汎用的な問題である量子プロセス識別問題を扱えることが判明し,本問題に取り組むことにした。本年度では,操作的確率論を用いて量子プロセス識別問題を素直な形で定式化することにより,最大正解率の上界・下界を導出できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に対して障害等は生じておらず,継続して量子論の数理構造の解明に関する研究を推進する。来年度では量子プロセス識別問題における最適識別が持つ性質などを解明することをめざす。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,新型コロナウイルスの影響により学会参加の計画がなくなったためである。投稿論文数が計画以上に増える見通しであるため,次年度使用額を論文投稿に関する費用などに割り当てる予定である。
|
Research Products
(1 results)