2023 Fiscal Year Research-status Report
New approach to fundamental laws of non-equilibrium physics based on gauge/gravity correspondence
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19K03659
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
中村 真 中央大学, 理工学部, 教授 (00360610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | AdS/CFT対応 / 非平衡定常状態 / 非線形電気伝導 / 開放系 / 輸送現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は非平衡系に対して提案されている「揺らぎと応答の不等式」をゲージ・重力対応の観点から重力理論側で解析した。その際に、これまでに開発したゲージ・重力対応における非線形応答の新しい計算手法を活用した。この研究では、「揺らぎと応答の不等式」を成立させる重力理論側のモデルの範囲と、重力側で正則な解を実現するモデルの間に強い関連性があることを示唆する予備的な結果を得た。 また、開放・散逸系での自発的対称性の破れと動的臨界現象の研究においては、南部・ゴールドストーンモードの寄与に加えてヒッグスモードの寄与も含める形で、1-loopのオーダーで自己エネルギーの計算を遂行した。 差動回転系におけるスピン輸送の研究も実施した。この研究では、スピン流を生成する新たなメカニズムを提案し、その研究成果をarXiv:2401.00174としてプレプリントサーバにて公表した。 さらに、散逸環境下におけるトンネル効果についても研究を行い、これまでに数値計算で得たインスタントン解の物理的解釈を明確にするための解析を行った。 また、ゲージ・重力対応においてワイル半金属を表現するモデルの構成も進めた。ここで得られた研究成果について、現在論文を執筆中である。また、熱浴中を牽引される部分系で構成した非平衡定常状態の非平衡相転移について解析を行い、相転移と有効温度の関係について明らかにした。特に、非平衡定常状態における相転移現象と平衡系における相転移現象の関係について有効温度の視点から現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の主題に基づく複数の研究を進めることができており、新たなスピン流のメカニズムを提案するなど、プレプリント論文の発表に至った成果あるが、計算の最終段階や論文の執筆段階で時間を要している研究テーマが複数あり、次年度にはこれらを論文の形で出版する必要がある。非線形応答の研究では新たな計算手法が確立したが、この手法を応用した新たな研究を提案していくことで、さらにこの計算手法の応用例を蓄積していくことが望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、非平衡相転移および非平衡定常状態の有効理論に関する研究、非平衡定常状態の安定性解析、非平衡定常状態における相関関数の計算、ゆらぎと応答の関係などの非平衡系の基本的な問題に関する研究を遂行していく。加えて、散逸環境下でのトンネル効果やスピン輸送に関する研究を進めるとともに、場の理論における繰り込み群の手法も活用する。特に繰り込み群の視点をゲージ・重力理論の枠内に翻訳することで、重力理論側での繰込み群の解析により臨界 指数を計算することを試みる。このような研究により非平衡相転移を記述する有効理論に関する知見を深めるとともに、非平衡定常状態の基本的な性質を探っていく予定である。 次年度は本研究課題の研究に一定の区切りをつけるべく、現在最終段階にある動的臨界現象の計算を完成させるとともに、ワイル半金属を表現するゲージ・重力対応の新たなモデルに関する現在執筆中の論文、熱浴中を牽引される部分系の非平衡相転移の記述に関する論文を投稿する。さらに、散逸存在下のトンネル効果および「揺らぎと応答の不等式」に関するゲージ・重力対応の視点での研究については、既に得られている予備的結果を補強し、論文の執筆段階にまで持って行く予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で過年度までにキャンセルされた海外出張や国内出張などの経費をこれまで既に繰り越しており、これらを完全に今年度中に消費するに至らなかった。また今年度も出張回数が想定よりも抑制される結果となるなど、計上した予算に比べて実際の支出が下回る結果となった。次年度使用額については、海外や国内での出張経費や海外、国内からの研究者の招聘などを中心に有効利用することを計画している。
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