2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K03661
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山崎 義弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10349227)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 粘着 / 非線形動力学 / 数理モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)粘着・皮膜剥離解析装置を用いて、粘着テープ剥離時の剥離先端の観察を行った結果、剥離先端に観られる周期的な糸引き構造に生じた欠陥が伝播していく様子を確認した。実際、剥離先端において、周期的な糸引き構造には安定な間隔が存在する一方で、何らかの不均一性により、安定な間隔で剥離が進展することが阻まれる。このような不均一性によって周期的な糸引き構造に欠陥の生じ、その欠陥が剥離先端内で一方向に伝播する。現在、この伝播の様子についてさらなる解析を進めている。 (2)我々の先行研究では、粘着テープの剥離系を力学系として観て数理モデルを構築した際、超離散法によって、その数理モデルからセルオートマトンを導出した。この先行研究の流れを発展して、超離散力学系の構築を試みた。実際には1次元系で観られる分岐現象として、トランスクリティカル、ピッチフォーク、サドルノードに着目し、それぞれの連続系における標準型に対して、超離散極限公式を適用することによって、対応するmax-plus方程式が導出された。重要な点は、この導出したmax-plus方程式が、もとの標準型で観られる分岐現象に関するダイナミクスの一部を保持している点である。例えば、ピッチフォーク分岐であれば、分岐点前後で、一つの安定解を持つ状態から、二つの安定解と一つの不安定解を持つ状態に変化するが、対応するmax-plus方程式においても、分岐パラメータが存在し、同様の状態変化を示すことがわかった。この研究は、本研究課題を発端として派生の研究テーマともいえるが、超離散力学系、または、max-plus力学系ともいうべき新しい研究テーマを開くものとして期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね、当初の計画通り進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)申請時の実施計画に沿って、今後も本研究を推進していく。特に、粘着剤の大変形に対する動画解析に基づいて、前駆現象に関する理論の構築を目指す。 (2)本研究課題からの派生として、超離散力学系に対する理論構築の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
昨年度と同様、新型コロナウィルスの影響で、学会・研究会への出張旅費としての支出分を次年度に使用する必要が生じた。次年度、出張が可能であれば、出張費として使用 し、また、実験試料や測定機器の充実を図る計画である。
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Research Products
(3 results)