2021 Fiscal Year Annual Research Report
Microscopic and hydrodynamics approaches to nonequilibrium statistical mechanical models
Project/Area Number |
19K03665
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
笹本 智弘 東京工業大学, 理学院, 教授 (70332640)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非平衡統計力学 / 揺らぎ / 流体力学 / KPZ普遍性 / 可積分系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、微視的な統計力学模型に対する厳密な解析と流体力学的手法を組み合わせることにより、非平衡多体系の揺らぎに関する普遍的な性質をより統一的な視点から理解することであった。より具体的には、Kardar-Parisi-Zhang(KPZ)系に対する微視的な計算に基づく厳密解に関する理解を深め発展、応用すること、特に保存量が複数存在するより一般の系に理論を拡張してゆくこと、さらにそれらを流体力学的な取り扱いと比較して総合的な理解を得ることを目指していた。 まず最初のKPZ系に対する微視的解析に関しては2020年中にKPZ系と有限温度フェルミオ ンの間に直接的な関係をつけられることを見出すことに成功し、その理解は本質的に深まった。これは従来標準的に用いられてきたモーメントの多重積分表示と母関数を用いる手法と比較して格段に見通しがよい。また関係をつけるために用いたのはRSK対応と呼ばれるよく知られた組み合わせ論の手法を一般化したものであるが、離散古典可積分系との関係が見られるなど、これまでの研究には見られなかった新しい視点をもたらしており、今後の一般化、発展が期待される。典型的な応用として、半無限系におけるKPZ系への応用などを議論した論文も2022年度に入ってすぐに完成した。 一方で、保存量が数多く存在する場合の非平衡揺らぎを調べるための枠組みとして、流体力学がいわゆるGeneralized hydrodynamics(GHD)によって記述されるような系に対する大偏差理論を定式化した。従来は拡散的な振る舞いを示す系が中心になって調べられていたが、近年弾道的な振る舞いを示す系も着目を集めており、我々の理論はその揺らぎの研究において基礎的な役割を果たすと期待される。さらに保存量が複数存在する系の揺らぎを微視的に解析する論文も2021年春に完成した。
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Research Products
(18 results)