2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on highly accurate analysis and critical universality for topological phase transitions by the use of the improved dynamical scaling
Project/Area Number |
19K03666
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
尾関 之康 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (70214137)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非平衡緩和法 / 動的スケーリング / フラストレーション系 / トポロジカル相転移 / カーネル法 / パーコレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
Koterlitz-Thouless (KT) 転移に始まるトポロジカル相転移系では非常に遅い緩和によるシミュレーションの難しさが共通の課題になっている。非平衡緩和法は、遅い緩和によって平衡シミュレーションに困難を来たす系に、系統的な数値解析を実現してきた。さらに最近、ベイズ推定とカーネル法を利用して、動的スケーリング解析が改良され、汎用で高信頼・高効率な解析法に発展した。2020年度は以下のような成果を得た。 (1)磁場中三角格子反強磁性ハイゼンベルグ模型において議論が収束していない、高磁場側の相転移描像を確立するために、動的スケーリング解析を実施した。動的秩序変数を慎重に選択し、これまでの議論に現れなかった新たな描像を観測し、臨界普遍性の解析まで行った。 (2)Event-chain法と呼ばれる大域更新のモンテカルロアルゴリズムを非平衡緩和法に適用し、その効率の利点や適用限界を調べた。緩和の速さが特徴で、動的臨界指数が通常よりも小さく収束が速いが、サイズ依存性も早期に現れるため、慎重な解析を必要とした。臨界指数を精密に決定する「ゆらぎの緩和」の実効性も検証した。 (3)特異な臨界指数を持つある種のパーコレーション模型においては、通常のスケーリング解析に困難が生じるが、非平衡緩和法で成功した動的スケーリング解析と同様に、無限系相当のスケーリング解析を開発した。厳密解のある模型で高精度な評価が可能であることを確認し、既存の有限サイズスケーリングの結果の問題点を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記(1)については学術誌へ掲載された。(2)については学会発表を行い学術誌への投 稿準備中である。(3)についても学会発表を行い、学術誌への投稿準備である。総じて順調な進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を踏まえ、Event-chain法による動的スケーリング解析をフラストレーション系に積極的に応用していく。パーコレーション問題へのスケーリング解析の系統的な整備を進めていく。三角格子ハイゼンベルグ模型の解析を継続する。また、当初の予定通り以下の研究を計画している。 (a) KT転移の判別法の確立:KT転移は緩和が遅く、低次元特有の強い揺らぎのために、転移温度近傍や低温領域で平衡シミュレーションの収束に難がある。このため、数値的に観測された転移の徴候が、KT転移に由来するのか、他の二次転移に由来するのかの判別で、しばしば議論が起きている。前述のように、スケーリング作業の自動化によって、複数の最適化作業を要する解析が容易に行えるようになるので、これを利用する。 (b) KT転移の動的臨界普遍性:KT転移には静的指数ηと動的指数zが独立に存在するが、予備的な研究では、前者は模型や変数に強く依存し、後者はほぼ一定の普遍性を示唆していた。この描像は、通常の強磁性転移とは異なる振舞いだが、精度を高めて確立したい。また、KT転移では低温相内でも同様に指数が定義できるので、KT相内の両指数の振舞いを調べ、特に動的普遍性の構造を明らかにしたい。 (c) 多様なトポロジカル相転移の解析法の確立:①2次元ANNNI模型は、逐次相転移の中間層の識別で論争が有り難航している。②反強磁性三角格子系は、磁場や異方性による効果が多彩だが、シミュレーションの困難さのために多くの課題が残されている。また、KT転移を超えたトポロジカル転移として、以下の系の解析を準備中である。③反強磁性三角格子ハイゼンベルグ模型で議論されているZ2ボルテックス転移④2次元RPn模型で指摘されるZ$ボルテックス転移⑤2次元のカイラル磁性体に現れる粒子様励起を伴うスキルミオンが挙げられる。
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