2020 Fiscal Year Research-status Report
3次元乱流中に自発的に現れる2次元構造とエネルギー伝達の時間的・空間的揺らぎ
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19K03677
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
高岡 正憲 同志社大学, 理工学部, 教授 (20236186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 英一 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (60710811)
横山 直人 東京電機大学, 工学部, 准教授 (80512730)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 局所フラックス / 非等方乱流 / 波数空間 / 保存量 / 波動乱流と渦乱流の共存 / 臨界平衡 / 自己組織構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
乱流は渦や波の複雑な3次元運動であるが、2次元的な自己組織構造が現れる。乱流の統計理論は、各保存量のカスケードに対する束縛条件から、3次元と2次元の一様等方性乱流では逆向きのエネルギーの流れを予測する。他方、数値解である不安定周期軌道を用いて乱流の生成維持機構や統計的性質を説明しようという試みもある。本研究の目的は、自己組織構造をもつ非等方性乱流中のエネルギーの流れを明らかにすることである。 当該年度は、エネルギースペクトル方程式の非線形相互作用における不定性を除去する1つの方法を提案し、波数空間におけるエネルギーの局所的な流れを定量化した。また、提案した定量化は、一様等方性乱流のそれを拡張したものであり、非等方性流れの代表例の1つである3次元回転乱流に適用し、弱乱流理論の予測に沿うエネルギーフラックスも得られたので、国際学術誌に論文として公表した。 乱流における不安定周期軌道の研究は平行平板間流に始まるが、本研究では、壁乱流と回転効果の両方の特性を持ちコンパクト領域である回転球殻Couette流の遷移を調べている。パラメター数も多く探索域の絞り込みに手間取ったが、帯状流と慣性波の競合により、方位角方向波数m=3,4の定常進行波の双安定や、赤道反対称性による間欠遷移と思しき振る舞いも見出し、流体力学会で講演した。 上記のように回転効果はエネルギーの流れの非等方性に重要な役割をするので、その2次元流の代表例であるCharney-Hasegawa-Mima方程式を調べている。保存量の波数空間での局所流れの定量化法を提案し適用した結果、等方的なエネルギーの逆カスケードやエンストロフィの順カスケードだけではなく、帯状流の維持機構を示唆する低波数域での非等方的なエネルギーの流れも捉えることができた。物理学会や流体力学会での講演に加えてRIMS共同研究で招待講演をし、学術論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度は、申請時に予定していた研究分担者が分担ができない職位となり辞退されたこともあり、進捗状況は申請書の研究計画よりも遅れてしまったが、非等方性乱流に特有の異種乱流の共存状態における波数空間での各乱流の境界を定量的に同定する手法を提案し、成層乱流を例として適用しその有用性を確認した。 本年度は、当該研究者の職位が変わり研究分担者として復帰してくれて本研究が加速されたが、Covid-19への対応などにより職務に予期せぬ労力と時間を要し、遅れを取り戻すまでには至らなかった。その中で「研究実績の概要」に記したように順次成果をあげている一方、下記のような予期せぬ困難もでてきた。 波数空間におけるエネルギーの局所的な流れを定量化する手法を提案し、3次元回転乱流で有用性を検証したところ、低波数域から繊維域に渡り無視できない散逸が予期せず現れたので、よりスケール分離ができるような数値計算が必要なことが明らかとなった。回転軸方向とそれに垂直な方向とで格子点数を変えるなどの工夫をしながら、段階的に高波数領域を大きくするような大規模計算を実行している状況である。 また、回転球殻Couette流は形状の対称性が高くコンパクトであるにも拘らず、不安定周期軌道のような高精度を要する計算をしようとすると、平行平板間流に比べて遥かに計算負荷が大きくなることも明らかとなってきた。Krylov部分空間法を用いるなどの工夫をしているがReynolds数を上げるのは困難を伴っている。他方、Charney -Hasegawa-Mima方程式の数値計算は2次元の周期境界条件であり、擬スペクトルによる高速高精度の手法が使える。しかし、帯状流という非等方な大規模自己組織構造が現れることはよく知られているが、そのために統計的定常状態に達するまでに2次元一様等方性乱流に比べて遥かに長い時間の数値計算を要することもわかってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」にも記したように次々と予期せぬ事態が起こり、進捗状況は申請書の研究計画に比べてやや遅れているが、申請時の研究体制に戻っておりCovid-19に対する職務における対処法も分かってきたので、当初の研究計画に沿うように研究を進める。 3次元非等方性乱流の代表例として調べている回転乱流や成層乱流では、低波数域に現れる2次元的大規模自己組織構造を考慮して格子点数や境界条件の周期長を変えているが、その非等方性を示す低波数域から等方性乱流へ遷移する波数域までの領域で無視できない散逸が現れて、非等方性乱流から等方性乱流へのエネルギーの流れの遷移を捉えられていない。より規模の大きい計算で段階的に高波数領域を大きくしている状況であるが、必要に応じて低波数側の摩擦項や高波数側の散逸項をモデル化することも考える。 回転球殻Couette流では、その形状の単純さ故に計算手法に工夫の余地は少なく、計算負荷の軽減には更なる対称性を課すかモデル化が必要だと考えられるので、分岐や遷移を示すパラメター域で、慣性波と帯状流、或いは渦柱とトロイダル渦の競合に着目し、スケール空間でのエネルギー輸送と実空間の構造との関係を解明する事から始める。その中で得られた知見をもとに課すべき対称性やモデル化を考え、段階的に高Reynolds数の流れを調べる。 2次元の非等方性乱流の代表例であるCharney-Hasegawa-Mima方程式では、エネルギーやエンストロフィといった保存量の波数空間での局所流れが等方でも非等方でも定量的に検証できたので、この系において自発的に現れる大規模構造である帯状流に着目して研究を進める。帯状流の生成維持機構を解明するためにゾノストロフィと呼ばれる非等方性準保存量も調べる。このために、波数空間の局所流れの定量化手法を非定常状態にも適用し、波数空間と実空間とを結びつけて解析を行う。
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Causes of Carryover |
イタリアのミラノで開催予定であった国際会議(25th ICTAM)が次年度に延期になってしまった為、使用予定の参加登録費および旅費宿泊費が未使用になったことが主な原因である。加えて、参加を予定していた国内学会もオンラインでの開催となり、旅費宿泊費の支出が不要となった上に参加費も例年よりも安くなったことも理由である。 次年度も、国内か国際かを問わず各種学会や研究会はオンライン開催となると考えられる。移動が無い分、時間および肉体的疲労が軽減されるので、講演し議論する機会を増やす為に、これまで以上に多くの登録をしようと考えている。それ故に、次年度使用予定としては申請時には想定していなかったが、新たな研究会や学会への参加費およびオンラインでのコミュニケーションをスムースにするための機器の購入費に当てる予定である。 また、「今後の研究推進方策」にも記したように、3次元の非等方性乱流では高波数領域を大きくする必要がでてきたことから、数値シミュレーションで使用する波数空間の規模を大きくしているところである。この為、解析および可視化用の研究室の計算機のメモリ増設やデータ保存用のストレージを購入することを考えている。
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Research Products
(5 results)