2020 Fiscal Year Research-status Report
Exploring a Phase Diagram of Bose Gases in a 2D Anti-Dot Optical Lattice
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19K03685
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 俊哉 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (80452259)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ボース・アインシュタイン凝縮 / 光格子 / アンチドット / ボース・ハバードモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍の影響下であったため、本年度前半は、1)光源系の改良と調整および85Rbのボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)の高速生成に関する研究の統括を行った。また、後半は、2)真空システムの改良と低次元化のための新しい光学系の導入を行った。以下に、説明する。 1)前年度から引き続き、近赤外のレーザーアンプの改良を行った。出力パワーは導入前に期待していた値には至っていないが、前年度より40%ほど出力値が増大し、実際に実験で試行できるレベルにまで改善した。並行して、本研究でも利用予定である相互作用可変のボース凝縮体(85RbのBEC)についての一連の研究成果をまとめた。87Rbの同位体である85Rbは、2体および3体の非弾性散乱のためBEC生成が難しく、研究対象として敬遠されていた。今回の詳しい解析により、低密度で時間をかけて生成する従来の方法とは対照的に、十分予冷すれば比較的高密度で高速かつ大量のBECが生成できることがわかった。これは当該分野では画期的な成果であり、冷却が難しい他の多くの原子種に対しても有効な解決策を提示しており、大きな意義を有するものである。本成果は、専門誌 Physical Review A に出版された。 2)改良したレーザーアンプを用いても、前年から続く87RbのBECの原子数減少は、期待通りには回復できなかった。原子数の原因は、真空系内のRb金属アンプル量自体が減少しているためであると判断し、真空系を一旦、常圧に戻し、アンプルを取り換えることにした。さらに、真空系の改良(サブリメーションポンプの更新)も行った。並行して、低次元化のための新たなビームラインの構築も行い、次年度に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため種々の活動制限や時間的制約があったため、フルスペックで実験を推進できなかったことが最大の要因である。 さらに、前年から続くBECの原子数減少が、光源の性能改善・改良によって元のレベル近くまでは回復できず、結局、Rb金属アンプルの交換をせざるを得なくなり、真空系を常圧に戻した。また、以前から交換時期が近づいていたサブリメーションポンプの更新も行ったので、少し規模の大きな真空系の改良になった。本研究は超高真空の下で実験を行うものである。リカバーにどうしても時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、元の研究ペースに戻すため、更新した真空系でBEC生成の最適化に取り組んでいる。改良された光源は、系の低次元化やBEC生成にも役立てることができるので、再び実験を軌道に乗せることができると考えている。 BEC生成を最適化した後は、低次元化されたアンチドット光格子系に導入されたボース気体の位相コヒーレンスの研究を行う。完全に2次元化した場合や3次元から2次元へと次元がクロスオーバーする領域での位相コヒーレンス消失の様子を観測する。また、原子数による局在化の変化の様子も詳しく調べる予定である。時間的に余裕があれば、85Rbに切り替えて、原子間相互作用の強弱という自由度も新たに加えて、相間の強さと局在の関連性を詳しく調べ、ボース=ハバードモデルからの帰結との比較・検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により研究ペースが低下し、さらに真空系の改良を行う必要性から、ボース凝縮体をアンチドット光格子中に導入して行う本来の研究課題に専念できなかった。そこで、今年度は、本格的な研究に復帰できることを第一に考え、そのために必要となるものに支出を絞り、残りの予算は次年度に備えることにした。 次年度にまわした予算は、進捗状況にあわせて光学機器や素子にあてる予定である。また、国際会議等も軒並み延期、あるいはオンライン開催に変更となっている。国内外の会議や研究会参加の費用にも充てたいと考えている。
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