2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploring a Phase Diagram of Bose Gases in a 2D Anti-Dot Optical Lattice
Project/Area Number |
19K03685
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 俊哉 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80452259)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ボース・アインシュタイン凝縮 / 光格子 / アンチドット格子 / ボース・ハバードモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
R2年度に改良を施した真空系の下で、冷却原子の実験を再開し、一旦は87Rb原子気体のボース凝縮体(BEC)の生成まで回復した。しかしながら、BEC生成の最適化に向けた実験を行っていた矢先、新たな技術的な問題に直面し、R3年度は残念ながらそれらへの対応がメインの仕事となった。以下に説明する。 1)近赤外のレーザー増幅系の再構築。R2年度にパワー性能を改良して実験に使用するベルまでに引き上げた近赤外レーザー増幅系であったが、BEC生成回復後の間もない時期にアンプ用のレーザーチップが破損し、増幅不可となった。原因は不明である。増幅利得チップを新たに交換するしかなく、レーザー増幅系を設計段階から再構築をした。昨年度の経験があるので問題なく構築でき、光学系のビームラインも回復した。増幅後のパワーは期待以下であったため、パワー性能の改良に取り組みながら、実験を進めている。本増幅系により、BEC原子数の増大が期待できる。さらに、このビームラインは垂直方向の新たなトラップとして印加され、低次元冷却原子気体の実験に応用できる。 2)レーザー冷却用外部共振器型半導体レーザーの改良。原子ビームの減速、磁気光学トラップなど、冷却用として最重要となるマスターレーザー(後にこれを増幅する)に、原子加熱を引き起こす周波数モードが少し含まれることがわかった。これが予冷時の温度を上昇させており、最終的にはBECの原子数減少にも影響を与えていたと考えられる。外部共振器の形成に使う回折格子の交換および調整を行い、加熱の影響を無視できるレベルにまで改良した。本改良もBECの安定生成に寄与するものと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
引き続くコロナ禍の影響のほか、当該年度初めには真空系のトラブル、その後は重要な複数光源の故障があり、当該年度の初期に想定した研究計画通りに進めることができなくなった。これら光源の修理なくして本格的な実験は不可能であったため、研究終了年を1年延期し、まずはトラブルからのリカバーを最優先に考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
トラブルへの対応はほぼ済んだので、現在BEC生成の復旧を進めている。基本的な実験手続きに変更はないので、BEC生成の最適化も特に問題なく進められると考えている。BECの最適化は夏前に完了予定である。その後は、2次元アンチドット光格子系に導入されたボース気体の位相コヒーレンスの研究、2次元および次元のクロスオーバー領域でのボース気体のふるまいなど、本格的な研究を推進する予定である。光格子系に関してはシステムはすでに完成しており、現時点で大きな改良の必要はない。
|
Causes of Carryover |
改良した装置系でBECを生成し、本格的な研究を進めようとした矢先、実験遂行上重要な複数光源のトラブルに見舞われた。当初の予定ではR3年度は最終年度であったが、相次ぐトラブルのリカバーが最優先であるので、研究終了年を1年延期することにした。故障等は別途の予算を使って修理・改善済みで、R3年度の執行予算は必要となったものにとどめ、多くは次年度のために充てることにした。R4年度にまわした予算は、進捗状況にあわせて光学機器や素子の購入のほか、国内外の会議や研究会参加の費用にも充てたいと考えている。
|