2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K03686
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高島 秀聡 京都大学, 工学研究科, 助教 (00432162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NV中心 / ナノダイヤモンド / ナノ光ファイバ / 単一分子分光 / 微小共振器 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、量子コンピュータや、古典限界を超える感度を持つ量子計測などへの応用をめざし、固体による、複数の光子をもつれ合わせた多光子もつれ光子源の実現が期待されている。この光子源を実現する方法のひとつが、固体発光体による超放射である。しかし、これは、実現が最も困難な研究課題のひとつであった。 本研究では、固体発光体での超放射を実現するため、ナノ光ファイバブラッグ共振器を用いる。そして、ナノ光ファイバブラッグ共振器により、固体発光体であるナノダイヤモンド中の窒素欠陥(NV)中心の発光を増強させ、超放射の実現をめざす。 平成31年(令和元年)度は、ナノダイヤモンドを結合させるための高Q値ナノ光ファイバブラッグ共振器の開発を目指した。従来、ナノ光ファイバブラッグ共振器はガリウムイオンを用いた集束イオンビーム装置を用いて開発が行われてきた。しかし、ガリウムイオンによるサンプルの汚染や集束イオンビーム装置の加工分解能のため、高Q値化が困難だった。そこで、1nm以下の加工分解能とサンプルの汚染がない、ヘリウムイオン顕微鏡を用い、ナノ光ファイバブラッグ共振器の開発に取り組んだ。その結果、従来よりも16倍以上高いQ値を持つナノ光ファイバブラッグ共振器の開発に成功した。 しかし、ヘリウムイオン顕微鏡を用いた場合、加工中のチャージアップの影響により設計通り周期での加工が困難だった。この課題の解決に向け、加工パラメーターおよびヘリウムイオン顕微鏡内でのサンプルの固定方法について検討を行った。その検討の結果、設計通りの周期でナノ光ファイバブラッグ共振器を作製することが可能となった。また、自作の共焦点顕微鏡を用い、ナノダイヤモンドの評価を行った。その結果、従来のNV中心の発光波長とは異なる波長での発光を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近年、量子コンピュータや、古典限界を超える感度を持つ量子計測などへの応用をめざした研究が盛んに行われている。そのための光源の一つが、複数の光子をもつれ合わせた多光子もつれ光子源である。本研究では、この光源への応用を目指し、NV中心含有ナノダイヤモンド結合ナノ光ファイバブラッグ共振器を用いた超放射に着目した。 超放射の実現に向け、平成31年(令和元年)度は、637 nmに共鳴波長を持つナノ光ファイバブラッグ共振器の開発を目指した。しかし、当初の予定とは異なり、従来の加工方法では、加工中のサンプルのチャージアップにより設定通りの加工が困難だった。この課題を解決するため、チャージアップの低減に取り組んだため、当初の予定よりも研究の進捗が遅れることとなった。 また、自作の共焦点顕微鏡を用い、室温でナノダイヤモンドの評価を行った。当初の予定では、NV中心含有ナノダイヤモンドのみを評価する予定であったが、シリコン含有ナノダイヤモンドも入手できたため、両方のナノダイヤモンドの評価を行った。その結果、NV中心含有ナノダイヤモンドについては、従来通り637 nmにゼロフォノン線を示す発光に加え、赤色光励起時に、NV中心とは異なる波長に発光ピークを示すナノダイヤモンドを発見することができた。一方、シリコン含有ナノダイヤモンドについては、いくつかのナノダイヤモンドにおいて、シリコン欠陥中心とみられる発光ピークを観測した。 このように、当初の予定に加え、他のサンプルの評価を行っていたため、当初想定していた室温で超放射の可能性を示すナノダイヤモンドの探索を十分に行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年(令和元年)度は、637 nmに共鳴波長を持つナノ光ファイバブラッグ共振器の開発を目指したが、当初の予定よりも若干進捗が遅れた状況である。そこで、まず、637 nmに共鳴波長をもつナノ光ファイバブラッグ共振器の開発を行う。また、超放射を期待できるNV中心の探索についても、当初の予定より若干遅れた状況である。これについては、NV中心を多数含有するナノダイヤモンドを用い、引き続き研究を行う予定である。 超放射の実現には、パーセル効果によりNV中心の発光を40倍以上増強させる必要がある。そのため、パーセルファクターを評価するため、ナノダイヤモンドとナノ光ファイバブラッグ共振器とを結合させるマニピュレーションシステムを開発する。そして、開発したマニピュレーションシステムを用い、これらを結合させ、パーセルファクタの評価を行う。さらに、発光寿命が極端に短いNV中心含有ナノダイヤモンドとナノ光ファイバブラッグ共振器との結合にも取り組む。 固体発光体による超放射の実現には、極低温下での実験が不可欠である。そこで、ナノダイヤモンドの評価を極低温で行うための、極低温共焦点顕微鏡システムの開発にも取り組む、極低温下でのナノダイヤモンドの評価を行う。 これらの研究に加え、NV中心とは異なる発光ピークを持つナノダイヤモンドやシリコン含有ナノダイヤモンドについても引き続き研究を行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定では、ピコ秒ダイオードレーザーを購入する予定であったが、研究室内に既存のパルスレーザーでも測定が可能なことがわかり購入を取りやめたため、当初予定より物品費が少なくなった。一方、当初の予定では令和2年度に国際学会で発表予定だったが、研究が進捗したため初年度に国際学会で発表したため、旅費が増大した。
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