2020 Fiscal Year Research-status Report
量子ビット-調和振動子結合系におけるシュレディンガー猫状態の制御
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19K03693
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
布施 智子 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (00587925)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | circuit QED |
Outline of Annual Research Achievements |
超伝導共振器中のマイクロ波量子状態について、最近では特に、量子コンピューティングへ向けた研究が活発に進められている。本研究では、我々の提案した手法 [Phys. Rev. A 99, 013827 (2019)] に基づいて、マイクロ波共振器中のマイクロ波シュレディンガー猫状態の制御を行うことを目指している。 我々の提案では、共振器と量子ビットの結合強度の変調を利用して共振器中の光子の量子状態を制御する手法と、量子ビットの制御を利用して共振器中の光子の量子状態を制御する手法の二つを示しているが、本年度は主に、後者の手法へ向けて研究を行った。具体的には、超強結合量子ビットー共振器回路と深強結合量子ビットー共振器回路において、量子ビットを操作しダイナミクスを調べた。超強結合量子ビットー共振器回路については、ダイナミカルデカップリングパルス等を用いて量子ビットを操作し、ノイズスペクトル密度に関する情報を得た。また、深強結合量子ビットー共振器回路については、(我々の知る限り世界で初めて)そのダイナミクスの測定に成功した。量子ビットー共振器結合系では、量子ビットのエネルギーが共振器中の光子数に依存してシフトする(ac Stark shift)。このため、共振器中の光子数ゆらぎにより、量子ビットの位相緩和が起きる。このエネルギーのシフトは、結合が大きいほど大きくなるため、特に深強結合系では、位相緩和時間が非常に短くなる、もしくはコヒーレンスが見られなくなることが危惧されていた。しかし今回我々は、深強結合系のRamsey干渉等の測定に成功し、300 ns程度の位相緩和時間が観測された。今後、より詳細な測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
設計したサンプルの作製が予定通りに進まなかったため、今年度は、昨年度までに作製したサンプルを用いて研究を行った。このため、特に結合を変調する実験を行うことができなかった。一方、室温・冷凍機中のマイクロ波配線・回路等を改良し、量子ビットの制御・測定について、一定の成果が得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の提案した手法[Phys. Rev. A 99, 013827 (2019)]では、量子ビットー共振器の結合が深強結合領域にあることは必須ではないが、結合強度を変調する手法、量子ビットを制御する手法のどちらにおいても、結合が強いほど早く、マイクロ波シュレディンガー猫状態が生成される。今年度、深強結合系での基礎的なコヒーレンス測定に成功したことから、今後シュレディンガー猫状態制御に向けて、深強結合系のダイナミクスについて詳細な測定を行う。また、設計したサンプルの作製を進め、結合強度の変調について研究を進める。これらの結果を統合し、シュレディンガー猫状態制御へと研究を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は、主に旅費の使用がなかったため、次年度使用が生じた。次年度使用分は、必要なマイクロ波部品等の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)