2020 Fiscal Year Research-status Report
Physical properties and control of topological materials strongly coupled with light in non-equilibrium and excited states
Project/Area Number |
19K03695
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日野 健一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90228742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トポロジカル半金属 / ディラック半金属 / 線ノード半金属 / フロケ状態 / 光制御 / 光誘起磁化 |
Outline of Annual Research Achievements |
非平衡状態におけるトポロジカル秩序の形成と光制御の探究を目的として、以下の2つの物質系について光によるトポロジカル物性制御の研究を行った。 (1)擬2次元電子系である半導体量子井戸に直線偏光の連続波レーザーを照射することによって、Dirac半金属(Floquet-Dirac半金属)相が創成し得ることを理論的に予見した。さらに、付随して発現する結晶端の特異な電子状態(エッジ状態)の特性を明らかにすることができた。具体的には、レーザー強度の変化によって、エッジ状態が非自明相(トポロジカル状態)と自明相(タム状態)の間の秩序相転移が誘起されることが分かった。さらに、これらのエッジ状態は明確な境界条件依存性(直線偏光の電場方向依存性)を示すことを見出した。このような特異性は、レーザー強度の一定の領域において、高対称点以外のバルクブリユアンゾーン内に近接的な4重縮退が複数個安定に存在することに起因する。さらに、これらの縮退ノードを介することによって、様々な形態のエッジ状態が発現し得ることが分かった。以上の成果は日本物理学会講演およびScientific Reports誌において発表した。 (2)回転対称性を有するCd_3As_2型の3次元Dirac半金属結晶に円偏光レーザーを照射して、時間反転対称性の破れによるスピン分裂を伴うFloquetトポロジカル半金属相の創成および光制御を行った。上記(1)の2次元系と同様に、レーザー強度の一定の領域においてバルクブリユアンゾーン内に近接的な4重縮退が発現することを見出した。特に、これに起因してFloquet線ノード半金属相を発現することを見出した。さらに、これに付随してスピン偏極した膜状のエッジ状態が形成されていることが分かった。現在、このような特異な系における光誘起磁化の発現可能性を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
擬2次元電子系におけるFloquet-Dirac半金属相の創成および特異なエッジ状態の発現を精査することによって、近接的な4重縮退の存在と起因を明確にできた。これは当初想定した物理とは異なるため、研究の方向性に更なる独創性が深まってきている。とくに、円偏光レーザー照射下の3次元トポロジカル物質系において、この縮退に起因する線ノード半金属相を光制御下で創成し得る可能性が見い出された意義は大きいと思われる。以上のように、当初とは多少異なる研究方向になるが、ほぼ順調に研究は進捗していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
円偏光レーザー照射下の3次元トポロジカル物質系において見出された線ノード半金属相の物性を調べる。この半金属相はスピン偏極した特異な膜状エッジ状態を形成するため、物質内に光誘起磁化が発現すると期待される。強レーザー照射下の非平衡状態において、この磁化発生機構を逆ファラデー効果等を調べることによって明らかにする計画である。
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Causes of Carryover |
未使用金額が発生した主な理由は、講演発表した学会がすべてオンライン開催になったので、旅費として計上した予算が消化できなかったためである。次年度も同様な事態が継続すると思われるので、旅費相当分の予算を物品購入費に回す予定である。助成初年度に購入したワークステーションの周辺機器等を購入し、研究環境の改善に努めたい。
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