2019 Fiscal Year Research-status Report
New dynamics based on the light field driving and quantum-path interference
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19K03696
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
萱沼 洋輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任教授 (80124569)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Volterra積分方程式 / 強レーザー駆動 / 動的局在 / 量子経路干渉 |
Outline of Annual Research Achievements |
パルスレーザー技術の進歩により、摂動論による取扱いの許される範囲を超えた強電磁場によって駆動される固体や分子系での電子ダイナミクスの実験的研究が盛んになり、その解析を行う理論が要請されている。この研究課題では、本研究者の考案したVolterraの積分方程式による諸問題の定式化と、それを用いた電子ダイナミクスの計算を行った。 この方法によれば、基底状態から強レーザーパルスで連続状態に励起された電子のレーザー場中での駆動と脱励起を、閉じた有限自由度の問題に変換して処理ができる。この時、基底状態と結びつく連続自由度の一次結合である「ポータル状態」を導入することで、無限自由度を含む動力学を、有限自由度の問題に落とし込むテクニックがポイントの一つである。 初年度で取り扱ったモデルとしては、 (1)固体における光電子放出の時間分解動力学(2)電子・フォノン結合系での誘導ラマン過程の飽和現象(3)空気中(窒素分子)における非共鳴強レーザー誘起の分布反転現象 (4)動的局在と量子ゼノン効果の共存する系での二つの「局在現象」の競合関係 などがある。これらの現象について理論モデルを立て、積分方程式法による数値計算を行った。この結果の一部は、国際会議や国内学会などにおいて講演済みであり、現在、論文とレビュー記事を執筆中である。 (1)は、この手法の有用性を試すたたき台であり、計算を繰り返して確かめている。(2)については、実験データがすでにあり、数値計算の結果もよくこれを再現している。国際会議等で報告済みである。(3)についてはレビュー論文として執筆中である。(4)は学会などで公表済みであるが、次年度中に論文に取りまとめる予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いくつかの現象について、並行してモデル計算を実行している。また、研究成果の学会・国際会議での発表も順次行っている。基本となる理論的手法は一つであるが、実験研究において様々なバリエーションに遭遇するので、適切に対象を絞って成果をまとめてゆくことも必要であろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、多様な局面を有しており、実験的研究も急展開しつつあるので、数値計算を含む研究の実行と研究成果の取りまとめを適時に行ってゆくことが今後の課題になるだろうと予想している。また、他の研究機関の理論研究者との共同研究も模索してゆく予定である。また、実験研究者との共同研究も重要と考えている。 このテーマがカバーする問題が多岐にわたるので、優先順位をつけて片付けてゆくことが必要である。とりあえず、空気中(窒素分子)における非共鳴強レーザー誘起の分布反転現象に関する計算結果をレビュー論文として取りまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた国内出張を取りやめたことが主な原因である。次年度の出張旅費として使用する予定である。
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