2021 Fiscal Year Research-status Report
New dynamics based on the light field driving and quantum-path interference
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19K03696
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
萱沼 洋輔 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任教授 (80124569)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子経路干渉効果 / 2連パルス制御 / Volterra型積分方程式法 / 動的局在 / 偏光相関分光法 / 強光電場効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は大きく分けて量子経路干渉効果に関わる次の二つのテーマで理論研究を行った。 (1) 強いパルス光照射下での固体中電子の駆動メカニズムの新しい定式化 強いパルス光電場の下での半導体・絶縁体中の電子の運動を記述する簡潔な公式を提案した。これはVolterra Integral Equation Approach to the Electron Dynamics in Intense Optical Pulsesの題目でSpringer-Nature社刊のレビュー誌(査読在り)Topics in Applied Physicsに掲載された。 この手法を用いて、固体における高次高調波発生のメカニズムを議論し、高調波スペクトルの照射パルスパラメータ依存性を議論した。この分野で今日広く使われている理論では、固体結晶の伝導帯・価電子帯を連続状態と近似する「有効質量近似」に立脚するものが主流であるが、強い光電場中では固体結晶に固有の離散的構造に起因する「動的局在効果」が極めて重要な役割を果たすことを指摘した(学会発表済み)。 (2) 位相ロック2連パルス照射によるフォノン・電子結合系のコヒーレント制御理論 GaAs結晶とダイヤモンド結晶を対象として、2連パルス励起によるコヒーレントフォノン生成のメカニズムを明らかにした。これは実験的研究と協力して継続して研究している課題であるが、今年度はとくに2連パルスの位相差に加えて偏光方向の相対的関係、および結晶軸との関係に注目し解析を行った。GaAs結晶における2連パルス励起実験において、パルスの遅延時間と相互の偏光相関の二つのパラメータを用いて、より詳細な情報を得られることを示した(論文発表済み)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強パルス電場中の電子駆動の研究は今のところ理論主導で進めているが、研究途上で新しい発見(動的局在の本質は何か?)があり、この研究課題中でさらに展開させるべきだと判断している。このためもあり、研究期間延長を申請した。動的局在は、通常考えられているように電子が格子点上に静止するのではなく、メゾスコピックスケールの軌道上で激しく振動している状態であり、新たな高次高調波発生源となりうる新奇な量子状態である。動的局在の実現にはかなりの強光電場を要するが、長波長の赤外光を用いれば到達可能であろう。特に円偏光を用いれば光渦の高次高調波も実現可能と考え研究を進めている。 一方の2連パルス励起コヒーレントフォノン生成についても、実験・理論の両輪がかみ合った状態で進展しており、成果がもたらされている。なお今後の展開を予測している。
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Strategy for Future Research Activity |
強パルス電場中の電子駆動問題に関しては、「現在までの進捗状況」で述べたような新展開があった。これは日本物理学会講演とレビュー論文でその一部を公表ずみであるが、本論文としてまとめなければならない。今後は、そのための理論構築と数値計算に集中する予定である。位相ロック2連パルス励起によるコヒーレントフォノン生成の課題については、実験研究が順調にすすんでおり、新しい成果がすでに論文誌に掲載決定になっている。 なお、両方に関連する問題として、2連パルス励起においても強電場効果が観測されているらしいという兆候(ラマン散乱の飽和効果)があり、現在、理論解析を進めている(学会発表済み)。今後、論文として公表の予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ蔓延のため、全く出張ができず旅費が使用されなかったことが大きな理由である。 次年度には得られた研究成果とりまとめとその発表のため、論文作成にかかる費用(ネイティブによる閲読等)と国内および国外での学会発表の旅費として主に使用する予定である。また、研究打ち合わせのために国内旅費(主として東京・大阪間)にも使用させて頂きたい。研究遂行上必要な消耗品(電子機器など)も必要に応じて購入する。
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Research Products
(5 results)