2019 Fiscal Year Research-status Report
Fermi energy control using electrical contacts in electric-field-induced p-n junctions
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19K03697
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
島津 佳弘 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70235612)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 2次元物質 / 電界効果 / pn 接合 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元半導体結晶において、イオン液体を利用することで電場による高濃度キャリア誘起が可能であり、この手法を使ってpn 接合を形成できることがわかっている。このような実験においては、電極の影響が顕著に表れると予想される。電極を最適化することにより、系のフェルミエネルギーや2次元物質内でのバンドの曲がりを制御することで、デバイスの高性能化につながることが期待できる。2019年度には、過去に多くの研究例がある二硫化モリブデンとイオン液体DEME-TFSIを用いて、過去の研究例に匹敵する電場によるキャリア誘起の実証をめざした。金電極を用いた場合、作製したデバイスにおいて、効果的なキャリア誘起が電子側とホール側の両方で実現できることを確かめた。また、電場印加のもとでイオン液体が凍結する温度まで冷却することによって、pnダイオードが形成されることも確かめられた。過去の報告例と比べて逆方向電流が非常に小さいことから、良好なpn接合が形成できたと判断できる。イオン液体に一定の印加電圧(ゲート電圧)を加えた状態で、ドレインソース間電圧をスイープしたときに得られる電流電圧特性を調べることで、単一キャリア(電子またはホール)が誘起された状態、ドレイン近傍でキャリアが失われた状態、ドレイン近傍に逆符号の電荷が誘起され、チャンネル内に両方のキャリアが存在しpn接合が形成された状態の順に状況が変化することが確認できた。得られた電流電圧特性は、理論的に予測されるものとほぼ一致している。この実験結果により、本研究に用いている二硫化モリブデン結晶において、電場によるキャリア誘起が高濃度まで実現できることが示された。そして、実験条件および試料の時間変化等に関する重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上で述べたように、本研究室で使用している2硫化モリブデンを材料として、電場によるキャリア誘起が高濃度まで実現でき、良好なpn接合が形成できることが実験的に確かめられた。 過去の報告例と比べて、本実験で作られたpnダイオードの逆方向電流が非常に小さいことから、良好なpn接合が形成できたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体に印加電圧(ゲート電圧)を加えた状態で、ドレインソース間電圧をスイープしたときに得られた電流電圧特性を詳細に検討し、理論解析を行う。これによって、電極部の輸送特性に関する重要な知見が得られるものと予想できる。さらに今後は、いくつかの電極を用いて実験を行い、電子とホールに関する、電場によるキャリア誘起が電極にどのように依存するかを明らかにする。また、この手法で作られるpnダイオードの高性能化のための電極の組み合わせを探索する。本年度の実験により、イオン液体を用いた電界効果デバイスでは、輸送特性におけるヒステリシスが大きくかつ不安定であること、温度サイクルによる劣化がみられることなどの課題があることがわかった。これらの課題についても解決にむけて研究を進める。
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