2020 Fiscal Year Research-status Report
Fermi energy control using electrical contacts in electric-field-induced p-n junctions
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19K03697
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
島津 佳弘 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70235612)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電界効果 / pn接合 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 2硫化モリブデン / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
主として二硫化モリブデン試料を対象として研究を続行した。2020年度には、アルミニウム電極を有する二硫化モリブデン素子を作製し、ホール効果測定によるキャリア密度評価と電気伝導の温度依存性の測定を実施した。アルミニウム電極の場合、電気伝導に対する電極の影響が非常に顕著に観測されることが過去に研究代表者によって発見されていることに注意する。以前から電気伝導の測定結果より、従来から広く使用されている金電極の場合と比べて、アルミニウム電極試料においては著しくキャリア密度が高いことが予想されていたが、測定の結果、アルミニウム電極試料の場合、金電極試料においてバックゲート電圧によりキャリア誘起した場合と比較して、5倍から10倍程度も高いキャリア密度が実現していることを確かめることができた。これは本研究において初めて見出された実験結果であり、他の金属電極においてはみられない現象である。アルミニウム電極によってフェルミエネルギーが著しく大きくなっていることを示すと考えられる。4端子測定で得られた面抵抗の温度依存性は、約5Kの低温まで温度低下とともに減少し、金属的伝導を示した。これも他の金属の場合とは異なっており、キャリア密度の増大と深く関連した興味深い結果である。アルミニウム電極の試料において、イオン液体DEME-TFSIを用いて電場誘起を行い、電気伝導を調べた。220K の低温下で4Vまでのゲート電圧をイオン液体に印加し、伝達特性(電気伝導のゲート電圧依存性)を測定することができた。その実験結果は、バックゲート電圧を用いたときよりも大きなキャリア密度を電場誘起することができたことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電極によるフェルミエネルギー制御が本研究の課題であるが、上で述べたように、アルミニウム電極において、従来から広く用いられている金電極の場合と比べてフェルミエネルギーが著しく大きくなっていることを、キャリア密度測定により直接的に観測することができた。また、効率の高い電場誘起のための、イオン液体を使ったゲート印加の手法によるキャリア制御を、アルミニウム電極試料においても実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アルミニウム電極の2硫化モリブデン試料において、4端子測定で得られた面抵抗が約5Kの低温まで温度低下とともに減少し、金属的伝導を示すことがわかった。さらにキャリア密度を増大することによって超伝導の発現も期待されるので、イオン液体を使ったゲート電圧印加のもとでの電気伝導の温度依存性を低温まで測定することを計画している。しかし、これまでの実験で、イオン液体をのせた試料が100 K程度の低温においてこわれることがかなりの頻度で見られることが実験上の課題であり、対策が必要である。イオン液体の量やイオン液体に電圧をかけるためのトップゲート電極の構造などを最適化する必要があるものと考えられる。アルミニウム電極により電子を大いに誘起しn型半導体特性を得ることができることが明らかとなった。ホールを誘起し、p型特性を得るためには、別の種類の金属電極を使う必要があると考えられる。これに適した電極を調査することが今後の大きな課題である。
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