2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of the time-resolved photoemission measurement using the laser third harmonics generated by high efficient rare gas cell.
Project/Area Number |
19K03702
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
東 純平 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (40372768)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | レーザー / 非線形光学現象 / 装置開発 / 光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
LiF窓を使用した希ガス三次高調波発生用ガスセル,発生した三次高調波検出用の光電板ならびに超高真空仕様の排気チャンバー,二種類の希ガスを圧力調整しながらガスセルに充填するガスラインの試作とテストを行った.Xeガス一種類を100Torrまで充填し,位相整合条件を満たす420nmの光を用いて三次高調波発生をテストしたところ,55mWの基本波に対して140nmの三次高調波による光電流が2.5pA得られた.光子数に直すと毎秒1.6×10の7乗個である.この結果から,420nmの基本波を100mW程度投入し,かつXeガスの圧力を1000Torr程度に上げることで,三次高調波による光電流が200pA程度発生できると考えられる.空間電荷効果を考慮すると時間分解光電子分光用の光源としては10pA程度が上限となるので,試作したガスセルの発生効率でも最低限実用に耐える事が分かった. 希ガス三次高調波用ガスセルは,ガスの純度を長期間維持する為に超高真空仕様で設計製作がなされている.ベーキング無し,高真空状態からの封じきりでテストしたところ,1ヶ月程度放置しても放出ガスが数Torr程度であることが確かめられた. また,三次高調波の発生効率の基本波に対する波長依存性についても調べたが,420nmの基本波を1~2nm程度変化させても明らかな増減は見られなかった,使用したレーザーのパルス幅が200fsであり,時間とエネルギーの不確定性による波長の広がりが10nm程度ある為,位相整合条件からは外れなかったと考えられる.現在のレーザー光学系では発振条件を維持しながら波長を大きく変えられない為,基本波の波長を自由に制御出来るようにレーザーの光学系を改造する必要がある.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上でも述べたが,LiF窓を使用した希ガス三次高調波発生用ガスセル,光電板を用いて発生した三次高調波を検出するシステム,二種類の希ガスを圧力調整しながらガスセルに充填するシステムの試作が完了した.試作したガスセルの変換効率は低い(基本波1光子あたり10のマイナス10乗)ものの,基本波を発生させる為のTi:sapphire再生増幅器のパワーやパルス幅が最適化できておらず,またガスセルに基本波を集光するための光学系も仮のものであるので,変換効率は更に改善できるものと考えられる.また変換効率の値は低いが,それでも光量で見た場合には時間分解光電子分光用の光源としては十分実用に耐えられる目処が立っている.
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き試作した希ガス三次高調波発生用ガスセルを用いて,三次高調波集光光学系の最適化,大元のTi:sapphire再生増幅器の最適化を行う.Ti:sapphire再生増幅器は今年度の別予算で大幅に出力を向上させる改造を予定している.三次高調波発生条件の最適化とレーザーのアップグレードにより変換効率の大幅な向上を目指す.また試作したガスセルによるテストと並行して,光電子分光装置に組み込む為の希ガス三次高調波発生用ガスセルならびにプリズムを用いた超高真空分光チャンバーと,遅延光学系などの時間分解光電子分光で必要とされる周辺装置の設計と製作を行う.得られた研究成果について学会や国際会議への参加ならびに学術論文への投稿や本研究センターで二年ごとに刊行しているActivity Reportなどにより公表すると共に,センターWebページなどを通じても情報公開を行う.
|
Causes of Carryover |
試作した希ガス三次高調波発生用ガスセルのテスト結果を元にして,時間分解光電子分光システムに組み込む為の実証用ガスセルとプリズムを用いた超高真空分光チャンバーを製作する予定であった.テスト用ガスセルでの試験が翌年度まで継続する必要が生じた為、翌年度に請求した助成金と合わせて,実証用の希ガス三次高調波発生用ガスセルならびに分光チャンバーを製作する.
|