2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of the time-resolved photoemission measurement using the laser third harmonics generated by high efficient rare gas cell.
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19K03702
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
東 純平 佐賀大学, シンクロトロン光応用研究センター, 准教授 (40372768)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザー / 非線形光学現象 / 光電子分光 / 装置開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
試作した希ガス三次高調波発生用ガスセル、光電板モニターならびに光電板モニターを設置する超高真空仕様の排気チャンバーを用いて、Xeガス一種類での三次高調波発生の長時間安定生について研究を行った.これまでのテストで基本波420nmを発生させる為の非線形結晶がレーザーによるダメージを受ける事から長時間の安定性に問題があることが判明している.そこで非線形結晶に集光する光学系の焦点距離を変更してビーム径を大きくし,レーザー光子密度が非線形結晶の損傷閾値よりも十分小さくなるように改良を行った.レーザー光子密度が下がる事で基本波420nmのパワーが低下することが危惧されたが,従来の光学系と同等の出力が得られ且つ結晶へのダメージを無視できるレベルまで低減できた.これまでの光学系では結晶のダメージを避ける為に焦点位置を外す事でレーザーの波面が乱れて変換効率が低下し,同程度の出力を得る為により大きなレーザー光子密度が必要であったことが結晶のダメージにつながったと考えられる. またガスセル内面からのガス放出の影響について評価を行った.ガスセル内部の真空はベーキング無しでは数日で5Torr程度まで悪化して平衡状態となる事が分かった.これら真空悪化のほとんどが壁面に吸着した水分子,炭酸ガス分子と考えられる.使用するXeガスの圧力が100Torr以上なので圧力比から考えると影響が軽微である様に思えるが,真空紫外領域で光吸収する上記のガス種はその領域での屈折率も非常に大きくなるため位相整合条件を乱す可能性が高い.ベーキングにより水分子と炭酸ガス分子を除去できれば,壁面から放出されるガスは金属内部からの水素に限定されるので,放出ガスによる真空悪化も大幅に低下し,且つ吸収帯も122nm付近にある水素のライマンαのみとなる.この事から三次高調波発生用ガスセルへのガス放出の影響を非常に小さくできると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
LiF窓を使用した試作型の希ガス三次高調波発生用ガスセル,光電板モニターを装備したした三次高調波検出チャンバーにより,時間分解光電子分光システムとして実用に耐える光量の三次高調波発生が可能となった.変換効率はおよそ基本波1光子あたり10のマイナス9乗以上である.ガスセルに基本波を集光する光学系を改良した結果,非線形結晶のダメージが抑制され長期間安定に420nmの基本波を発生し入力する事が可能となった.また長期安定性で問題となるガス純度についてはベーキング無しでは壁面のコンタミから発生するガスの影響が無視できないが,ベーキングにより大幅に改善できると考えられる.この様に要素技術そのものについては順調に進んでいる. しかしながら,昨年度頭にも報告したように420nmの基本波を増強する為に行ったTi:sapphire再生増幅器のハイパワー化が,コロナ禍によるレーザーの製造と輸入の長期停止により大幅に遅延してしまった.この遅延により,改良されたTi:sapphire再生増幅器システム周辺の光学系や420nmの基本波を発生させる光学系の最適化が昨年度にずれ込んでしまった.以上の事から事業期間を一年延長し,目標である高効率三次高調波発生用ガスセルの製作と時間分解光電子分光システムとしての運用を急ぎ今年度行う.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き試作した希ガス三次高調波発生用ガスセルと光電板モニターを装備したした三次高調波検出チャンバーを用いて波長変換効率の向上と安定化を目指す.今年度はガスセルをベーキングした場合の壁面からの放出ガスによる真空悪化の影響評価と対策を実施する.狙い通りであればベーキングにより真空悪化を大幅に低減できると考えられる.もし超高真空ガスセルの残留水素ガスが大きく影響する場合には,非蒸発型ゲッター(NEG)ポンプの技術を用いた小型の水素ガスフィルターを装備する事で解決する.他のガス種がベーキングにより排気されていれば,残留水素ガスへの対処は容易である.これにより試作した希ガス三次高調波発生用ガスセルの性能評価は概ね終了する.また試作したガスセルのテストと並行して,光電子分光装置に組み込む為のプリズムを用いた超高真空分光チャンバーの設計ならびに製作と,遅時間分解光電子分光で必要とされる延光学系などの組み立てを行う. コロナ禍により昨年度と一昨年度に国際会議や国内会議が現地開催される事は無かったが,本年度については得られた研究成果について学会や国際会議への参加ならびに学術論文への投稿や本研究センターで二年ごとに刊行しているActivity Reportなどにより公表すると共に,センターWebページなどを通じても情報公開を行う.
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Causes of Carryover |
一昨年度に試作した希ガス三次高調波発生用ガスセルのテストを完了し,そのテスト結果を元に時間分解光電子分光システムに組み込む為のプリズムを用いた超高真空分光チャンバーを製作する予定であった.しかしながら,何度も述べた様にコロナ禍によるアメリカ製レーザー装置の工場閉鎖と輸入停止により,ほぼ半年ほど計画が遅延してしまった.これらの事情から昨年度は希ガス三次高調波発生用ガスセルのテストを継続する事とした.今年度の計画では希ガス三次高調波発生用ガスセルのテストはベーキング時の真空悪化を調べる事のみなので,テストそのものは早々に終了する予定である.今年度は実証用の希ガス三次高調波発生用ガスセルならびに分光チャンバーを設計製作費や,時間分解光電子分光システム光学系の光学パーツ代として使用予定である. またほぼ二年続いたコロナ禍により国際会議や国内会議が現地開催される事は無かったが,本年度については得られた研究成果について学会や国際会議への参加ならびに学術論文への投稿を行う予定であり,これらの会議参加料や論文投稿料への使用を計画している.
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