2019 Fiscal Year Research-status Report
半導体薄膜による量子もつれ光子対生成:最適な膜厚の探索と共振器効果の理論的研究
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19K03705
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
安食 博志 東京電機大学, 理工学部, 教授 (60283735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 共振器 / 励起子 / 薄膜 / 表面ポラリトン / 量子もつれ光子対 |
Outline of Annual Research Achievements |
薄膜における励起子分子の輻射崩壊による量子もつれ光子対の生成において,その中間状態には「励起子+光子」,「励起子+表面ポラリトン」,「光子+表面ポラリトン」,「表面ポラリトン+表面ポラリトン」の4種類がある.このうち,量子もつれ光子対が生成されるのは「励起子+光子」の中間状態のみである.そこで,これらの遷移確率を調べることにより,量子もつれ光子対の生成効率とその最適化条件(膜厚など)を明らかにすることができる.本研究の目的の1つは,光子と励起子の相互作用を著しく増大させる共振器において,もつれ光子対の生成効率を研究することである.単純に考えると,相互作用が強くなれば量子もつれ光子対の生成効率が上がると考えられるが,表面ポラリトンを介した輻射崩壊も起こりやすくなるので,実際にはそれほど単純ではない.特に,共振器効果により,表面ポラリトンの分散関係と状態が大きく変化する可能性に注意しなければならないが,これまで,共振器中の表面ポラリトンの研究は行われていなかった. 今年度は,共振器中の薄膜における励起子表面ポラリトンの状態を計算することを試みた.励起子表面ポラリトンの状態を計算するためには,共振器の内外を含む全空間における光のモードを振動数の関数として求める必要がある.そこで,最も単純な共振器のモデルとして,2枚の空間座標に関するデルタ関数型の鏡を並べた共振器を考え,光のモード関数を解析的に求めた.次に,得られた光のモードと薄膜中の励起子との相互作用を考慮したハミルトニアンから,表面ポラリトンの分散関係を求めるための非線形方程式と,表面ポラリトンにおける励起子と光子の重ね合わせ係数の解析的な表式を求めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
表面ポラリトンの分散関係を与える非線形方程式は,振動数に関する積分(積分領域は無限大)が含まれる.この積分は留数定理を用いることで解析的に計算することができたが,数値的な積分計算と得られた解析解を比較すると,微妙な不一致が見られる.この問題はまだ解決しておらず,当初予定していた計画からやや遅れている.しかし,この計算ができれば,表面ポラリトンの状態の計算まで一気に研究が進む.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,早急に積分の解析解と数値的な計算の一致を確認する.数値的な積分は積分領域が無限大であることと,被積分関数にデリケートな部分があるため,可能な限り,信頼できる解析解を得ることに努力する.これに成功すれば,共振器中の表面ポラリトンの分散関係とその状態(光子と励起子の重ね合わせ係数)が計算し,共振器表面ポラリトンを含む中間状態への遷移確率,さらには励起子分子からの量子もつれ光子対の生成における共振器効果を調べる.
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Causes of Carryover |
数値計算用のワークステーションを購入予定であったが,処理に時間がかかる計算までには至らなかったことと,本年度の購入時期には間に合わなかった計算機(Mac Pro)が発売されたため,次年度にこの計算機を購入することにしたため. 計画がやや遅れており,消耗品等を購入する必要が生じなかった.また,研究発表するまでに至らなかったため,旅費を使用しなかった.
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