2020 Fiscal Year Research-status Report
スピン液体発現機構の解明とπ-d型擬二次元有機超伝導体の統一相図
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19K03707
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松永 悟明 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (10222308)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スピン液体 / π-d相互作用 / 擬二次元有機超伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
常圧のλ-(STF)2GaCl4のπ電子のスピンは強く反強磁性的に相互作用をしているにもかかわらず、これまでの実験においておよそ1.5Kの低温まで反強磁性等の時期的秩序状態への転移は観測されず、いわゆるスピン液体の状態にある可能性がある。λ-(STF)2GaCl4の反強磁性相互作用は正三角格子から大きくずれているにもかかわらず、反強磁性転移が観測されなかったことは、スピン液体状態が安定化する機構が本物質に備わっている可能性があることを示唆している。 π-d系の統一的理解を目指すために、新物質λ'-(STF)2FeBr4を合成し、圧力下・高磁場下抵抗、磁化、NMR等測定を行い、λ'-(STF)2FeBr4が圧力下で超伝導になることを発見した。さらに、新物質λ'’-(BETS)2FeBr4を合成し、圧力下・高磁場下抵抗、磁化測定を行い、λ'’-(BETS)2FeBr4も圧力下で超伝導になることを発見した。λ’ およびλ'’系はλ系とは異なる次元性を持つ新奇π-d系であり、同じく超伝導を示す物質であってもd電子の振る舞いは大きく異なることが分かった。これらの物質のバンド構造の計算を行い、λ-(STF)2GaCl4とはバンド構造が大きく異なることがわかった。また、λ’ およびλ'’系ともに電気抵抗が温度依存性をほとんど持たず一定であることがわかった。このことは、この系がデイラック電子系である可能性を示唆している。 これらの研究により、π-d系を統一的に理解するためには、単にπ-d相互作用について考えればよいのではなくd-d相互作用や系の次元性の果たす役割が重要であることが分かってきた。 これらの結果は日本物理学会で発表した。また、論文を投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
λ'’系の構造解析に成功し、そのバンド構造を拡張ヒュッケル法を用いた強結合近似で計算することに成功した。その結果、λ’ およびλ'’系はλ系とは異なる次元性を持つ導体であることがわかった。また、λ’ およびλ'’系ともに50K以上では電気抵抗が温度依存性をほとんど持たず一定であることがわかった。このことは、λ’ およびλ'’系がデイラック電子系である可能性を示唆している。さらに、λ’ およびλ'’系を調べるために、ホール効果と13C-NMRの測定を予定しており、当初予期していないことが起こっているが研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
常圧のλ-(STF)2GaCl4の基底状態を明らかにするために、ゼロ磁場及び磁場中μSR測定をk希釈冷凍機温度で行い、反強磁性相の有無およびスピンのダイナミクスを測定し、スピン液体出現機構の解明を目指す。 また、λ’ およびλ'’系の新物質をさらに合成し、圧力下・高磁場下抵抗、ホール効果、磁化、誘電率、13C-NMR等測定を行う。本研究により次元性やπ-d、d-d相互作用が電子系に果たす役割を明らかにし、π-d系の統一的理解を目指すとともに、λ’ およびλ'’系ともに電気抵抗が温度依存性をほとんど持たない機構を探る。
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Causes of Carryover |
2020年秋および2021年春に予定されていた日本物理学会がオンライン開催となり、予定されていた2名の旅費が支出されなかった。 今年度のヘリウム代金が上昇しており、また現在次の実験準備が順調に進んでいるため、寒剤の使用量の大幅な増加が見込まっるためその使用代金に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)