2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of first-principles structure search method applicable to large-scale systems and its application
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19K03717
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下司 雅章 大阪大学, エマージングサイエンスデザインR3センター, 特任准教授(常勤) (70397660)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 構造探索 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模系への適用を目指してランダムサーチに基づいた手法(OSE-RSS法)と空間群を網羅して初期構造を生成して探索を行う方法を開発してきた。今年度はSとSbの高圧相の探索を行ってきた。これまでのTeの研究から、高圧下での構造相転移をエンタルピーの比較で調べる場合、カットオフエネルギーとk点サンプリングで決まる計算精度に結果が依存することが分かっていたが、SとSnにおいてもこの点に注意して調べることで、このことがより一層はっきりと分かった。先行研究とは異なってSの高圧相として単純立方晶相が現れないことを示したが、一つの先行研究はカットオフエネルギーに起因する精度の問題であり、もう一つの先行研究はSの擬ポテンシャルが正しくないことをFLAPW法の結果と比較して証明した。これは、擬ポテンシャル法だけで議論している他の研究に示せない結果である。擬ポテンシャルは、超高圧状態を想定して作られていない場合があり、その確認をせずに高圧状態に適用すると誤った結果になる場合があるので、このような高圧物性特有の問題の解決法を示している。Snについては、先行研究のカットオフエネルギーの40Ryでは精度が悪すぎ、bct構造やbco構造を全く区別できないことも分かった。さらに、Sbの高圧相がbcc構造が60GPaから1000GPaを超えても構造変化を起こさず安定である可能性を示し、電子状態の詳細な解析とフォノン計算からそれの妥当性を示した。Srの高圧相ではこれまで知られているhcp構造よりも低くなる構造を見つけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間群を網羅する方法とランダムサーチを基にした方法をどの空間群にどちらを適用するのが効率的かつ的確に構造を見つけ出せるかががおおよそ分かってきた。正方晶、六方晶、三方晶、立方晶の空間群を網羅し、残りの低対称構造はOSE-RSS法で、あるいは初期構造が高対称性であっても、構造最適化で低対称構造に収束することもあって、調べたとみなせることが分かってきた。空間群を網羅する手法では単位胞に4原子の系で行っているが、これより大きい単位胞の構造でもある程度はこの方針でよさそうである。実際に計算する構造は大体250個程度で、事前テストで必要なカットオフエネルギーやk点を決める。これで、おおよその計算コストも見通しが立つようになった。しかし、必要な計算精度とその計算のために必要なメモリやHDDの容量は、当初の予想よりも大きい場合もあり、追加の計算資源の確保が必要な場合もある。 高圧下での構造探索における計算精度の問題が、これまで十分認識されていない結果が多く、多元系に進めるよりも一元系で信頼性の高い計算で調べるべきことが多いことが分かってきた。さらに、高圧なので金属状態にはなっているけれど、必要なカットオフエネルギーやk点サンプリングの値が、元素ごとにかなり違う場合があることも明らかになってきた。このような観点で物質の電子状態の議論をする例はこれまでなく、計算精度から見た物質の電子状態の性質を検討しなおすことが、物性の新しい側面に光を当てるとともに、実際の計算のコストを考える上での重要な情報を提供する可能性があり、この新しい展開を今後進める。
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Strategy for Future Research Activity |
おおよそ確立した構造探索法を、SbやSn、Srに加えてPなどに適用し、新しい高圧相の探索と先行研究で知られている高圧相の再検証を行う。Srは新しい安定構造の候補を見つけたが、空間群の決定をして新高圧相として確定する。Sbの同族のPとAsは、類似の高圧相が知られているが、bccとcI16構造の有無に元素の化学的性質が現れている。これを正確な構造の決定と共に電子状態を解析して高圧相の議論を進める。多くの高圧相は単位胞に4原子の系で見つかる構造が多いが、Sでは64原子系の構造になる領域もあるので、大規模系に適用する計画も進めて、正確な構造決定を進める。さらに、これまでで分かってきた元素の電子状態と計算精度を決めるパラメーターとの関係から、電子状態の新しい側面に注目した研究を進める。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大のために学会や打ち合わせがオンラインとなって旅費が不要になり支出しない予算が出た。今年度は可能な範囲で学会や打ち合わせのための旅費とし、論文発表のための費用、英文校正、PC関連の消耗品やデータ保存のためのHDDなどに使用する。
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Research Products
(6 results)