2021 Fiscal Year Annual Research Report
超音波を用いた結晶構造がもつカイラリティとフラストレーションによる多極子物性研究
Project/Area Number |
19K03719
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石井 勲 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 准教授 (20444713)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 電気四極子 / カイラリティ / 幾何学的フラストレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超音波分光法を用いて物質の結晶構造がもつ特異性であるカイラリティ(対掌性)や幾何学的フラストレーションに起因した電気四極子のカイラルらせん秩序や,フラストレーション効果による電気四極子のゆらぎによる量子臨界現象などの多極物性研究を行った。 研究対象物質の一つであるカゴメ格子状化合物Dy3Ru4Al12のパルス磁場中超音波実験では,電気四極子の感受率である弾性率の磁場掃引に対する巨大な履歴現象を観測した。履歴現象の起源として幾何学的フラストレーションに起因した電気四極子グラスや磁気熱量効果が可能性として挙げられる。 一方,DyNiAlでは2つの異なる結晶軸への磁場印可によって,それぞれ秩序変数の異なる磁場誘起のフェロ的な電気四極子秩序が出現することを明らかにした。電気四極子は同じ対称性の歪みと線形に結合するため,フェロ的な電気四極子秩序では巨視的な自発歪みが誘起される。磁場印加の方向によって発生する電気四極子の秩序相が異なることは,磁場印加の結晶軸方向によって発生する巨視的な自発歪みをスイッチ出来る新規マルチフェロイクスの可能性を示す。 またErNiAlの超音波実験を行い,磁気秩序温度以下で新たに相転移を見出した。この相転移温度近傍では磁化率は明確な異常を示さないことや,横波弾性率での超音波吸収を伴った巨大なソフト化および電子状態の解析結果から,この相転移の起源がフェロ的な電気四極子秩序であることを解明した。一般的に磁気秩序状態では発生した内部磁場によって電気四極子の自由度は失われるため,電気四極子秩序は起こり得ない。しかし,ErNiAlは磁気秩序状態で電気四極子秩序を示す,極めて珍しい物質であることを明らかにした。
|
-
-
-
-
[Journal Article] Distinct field-induced ferroquadrupolar states for two different magnetic-field directions in DyNiAl2021
Author(s)
I. Ishii, D. Suzuki, T. Umeno, Y. Kurata, Y. Wada, T. Suzuki, A. V. Andreev, D. I. Gorbunov, A. Miyata, S. Zherlitsyn, and J. Wosnitza
-
Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 103
Pages: 195151-1-6
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-