2021 Fiscal Year Research-status Report
Quantum phase and inelastic neutron scattering
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19K03727
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
伊藤 晋一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00221771)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ベリー位相 / スピンカイラリティー / スピンダイナミクス / 磁気励起 / 中性子非弾性散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、バンド交差により発生するベリー曲率が物性に及ぼす系の中性子非弾性散乱実験を試みる研究であり、そのような系である金属強磁性体Nd2Mo2O7のスピン波の測定を中性子非弾性散乱実験で引き続き行った。 スピンカイラリティーが予想される金属反強磁性体FeMnでは、Fe0.5Mn0.5の中性子非弾性散乱実験を広い励起エネルギーの範囲で実施したことを報告したが、Fe0.7Mn0.3についても同様の実験を行い、Fe0.5Mn0.5と同様に、低エネルギー領域では励起はスピン波であると解釈できるが、高エネルギー領域ではブロードな励起に変化していることを観測した。 Ce系の金属反強磁性体CeTSi3(T:遷移金属)で結晶構造に反転対称性を持たない系では、ベリー曲率の起源となる反対称性スピン軌道相互作用が発生していている。結晶場準位を中性子非弾性散乱実験で測定したことを報告したが、反対称性スピン軌道相互作用と超伝導発現との関係を議論して論文発表を行った。 強磁性体SrRuO3及びNd2Mo2O7でベリー曲率を中性子非弾性散乱で検出できることを示してきたが、次に、反強磁性体についても同様の研究を試みるために、ベリー曲率により異常ホール効果が発現する反強磁性体Mn3Snの多結晶試料を合成し、中性子非弾性散乱実験を行った。 これらの研究の中心的実験技術は中性子非弾性散乱であり、合わせて、中性子非弾性散乱の高性能化に向けた基礎研究を前年度に引き続きすすめた。研究は、 J-PARC MLFに設置された高分解能チョッパー分光器HRCを用いて中性子非弾性散乱実験を用いてすすめているので、HRCの装置性能を初めて絶対値で測定した。今後、装置構造からの計算値と比較し、測定値と計算値の不一致が高性能化の鍵となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属強磁性体Nd2Mo2O7のスピン波の測定を励起エネルギー5meV以下のゾンセンターを含む領域で測定し、低エネルギー領域でのスピン波分散関係を決める中性子非弾性散乱実験を行った。強磁性転移温度以下の温度範囲でスピン波分散関係の温度変化を測定した。異常ホール効果及び磁化の温度変化の基礎物性の測定も合わせて行った。中性子非弾性散乱実験も基礎物性測定も解析中である。 金属反強磁性体FeMnでは、単結晶試料を用いた中性子非弾性散乱実験を励起エネルギーが10meVから300meVの広い範囲で実施した。Fe0.5Mn0.5(磁気相転移温度TN=500K、磁気モーメントμ=1μB)とFe0.7Mn0.3(TN=450K、μ=2μB)について実験を行い、その結果、低エネルギー領域では励起はスピン波であると解釈できるが、高エネルギー領域ではブロードな励起に変化していることを観測した。Fe0.5Mn0.5とFe0.7Mn0.3の動的構造因子は、磁気モーメントや交換相互作用でスケールできることを明らかにした。 金属反強磁性体CeTSi3系の結晶場準位を中性子非弾性散乱実験で測定し、各結晶場準位の波動関数を決定し、反対称性スピン軌道相互作用と超伝導発現との関係を議論して論文発表を行った。 反強磁性体Mn3Snの多結晶試料を合成し、中性子非弾性散乱実験を行った。 これらの研究の中心的実験技術はJ-PARC MLFに設置された高分解能チョッパー分光器HRCを用いて行う中性子非弾性散乱であり、中性子非弾性散乱の高性能化に向けた基礎研究をすすめた。HRCの性能を決めるフェルミチョッパーの構造解析、安定実験のための装置整備、実験条件のシミュレーションが容易にできるソフトウェアの整備、HRCの装置性能の絶対値測定を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
強磁性体Nd2Mo2O7のスピン波と基礎物性の解析をすすめ、中性子非弾性散乱実験で得られた結果が、Nd2Mo2O7のスピンカイラリティーによるベリー曲率に起因するものであることを示すための検討を行う。 反強磁性体FeMnの磁気励起は、低エネルギー領域ではスピン波で記述できる。一方、高エネルギーのブロードな磁気励起の起源を明らかにするためには、磁気相転移温度(TN=500K程度)近傍で、このブロードな磁気励起がどのように変化するのかを調べる必要がある。現在、HRCでは高温領域での中性子非弾性散乱実験のための試料環境装置を整備中であるので、整備され次第、この実験を試みる。 反強磁性体Mn3Snの多結晶試料の磁気励起の温度変化の測定を行ったので、解析をすすめる。今後、必要があれば、Mn3Snの単結晶試料の合成や関連するMn3Geの合成もすすめる。 高分解能チョッパー分光器HRCの装置性能の絶対値測定と装置構造からの計算値と比較し、その結果を元にHRCを改善して高性能中性子非弾性散乱実験をすすめる。
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Causes of Carryover |
成果発表を予定していた国際会議がコロナ対応により次年度の延期になった。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Antiferromagnetic Kitaev interaction in Jeff=1/2 cobalt honeycomb materials Na3Co2SbO6 and Na2Co2TeO62022
Author(s)
Chaebin Kim, Jaehong Jeong, Gaoting Lin, Pyeongjae Park, Takatsugu Masuda, Shinichiro Asai, Shinichi Itoh, Heung-Sik Kim, Haidong Zhou, Jie Ma, Je-Geun Park,
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Journal Title
J. Phys.: Condens. Matter
Volume: 34
Pages: 045802(1-11)
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Field induced quantum spin disordered state in spin-1/2 honeycomb magnet Na2Co2TeO6 with small Kitaev interaction2021
Author(s)
G. Lin, J. Jeong, Y. Wang, Q. Huang, T. Masuda, S. Asai, S. Itoh, G. Guenther, M. Russina, Z. Lu, J. Sheng, L. Wang, C. Kim, J. Wang, G. Wang, Q. Ren, C. Xi, W.Tong, L. Ling, Z. Liu, L. Wu, J. Mei, H. Zhou, Z. Qu, J.-G. Park, Y. Wan, and J. Ma
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 12
Pages: 5559(1-8)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Damped Dirac magnon in a metallic Kagome antiferromagnet FeSn2022
Author(s)
Seung-Hwan Do, Koji Kaneko, Ryoichi Kajimoto, Kazuya Kamazawa, Matthew B. Stone, Shinichi Itoh, Takatsugu Masuda, German D. Samolyuk, Elbio Dagotto, William R. Meier, Brian C. Sales, Hu Miao, and Andrew D. Christianson
Organizer
2022 APS March Meeting
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