2019 Fiscal Year Research-status Report
ジグザグ反強磁性金属の「隠れた電流誘起磁化」が生み出す新規な電気磁気効果
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19K03736
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木俣 基 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20462517)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電流誘起磁化 / 電気磁気効果 / 反強磁性スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では空間反転対称性の破れた伝導系物質に着目し、その電流誘起磁化に起因した新規な電気磁気効果(電流と磁気の結合現象)を開拓することを目的としている。これまで、主に絶縁性物質においては電気磁気効果の研究が進んでおり、マルチフェロイクスと呼ばれる分野を確立している。マルチフェロイクスでは電気分極と磁気の結合が重要な役割を果たす。一方で、伝導電子の存在により電気分極が遮蔽される伝導系物質においても、電気磁気効果は存在するはずであるが、その具体的な形態や物理現象は解明されていない。本研究では電気磁気効果の発現が期待される空間反転対称性の破れた半導体や伝導系反強磁性体に着目し、さらに微細加工等によって電流密度を大幅に上げることで、従来は観測できなかった新規な電流誘起現象の観測を目指す。 今年度は、伝導系物質における電気磁気効果の一種である非相反抵抗測定を中心に、結晶構造や磁気構造、さらには界面において空間反転対称性を破る磁性多層膜系等にも着目し研究を行なった。 その結果、空間反転対称性を破る結晶構造を持つ半導体において、強磁場における量子極限状態での非相反抵抗に従来のモデルでは説明できない項が含まれることを見出した。この起源はまだ解明できていないが、本研究で主眼を置く電流誘起磁化と磁気との相関に起因すると考えられる。また磁気構造で空間反転対称性を破る反強磁性体については、非従来型の角度依存性を示す非相反抵抗を検出した。さらに反強磁性体と重金属からなる積層膜において、界面の反転対称性破れに起因する磁気抵抗効果を用いて反強磁性ドメイン反転機構の解明に成功した。また電流や熱流と磁気との相関現象である異常ホール効果やネルンスト効果を示す反強磁性金属での巨視的時間反転対称性の破れの起源となる拡張磁気八極子秩序を円偏光X線分光の観点から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、今年度は主に空間反転対称性破れに起因する伝導現象に関して多くの新規な結果が得られている。 具体的には、空間反転対称性を破る結晶構造を持つ半導体における強磁場量子極限状態での非相反抵抗の異常な振る舞いの発見、磁気構造で空間反転対称性を破る反強磁性体における非従来型の角度依存非相反抵抗の検出、反強磁性/重金属多層膜における界面の反転対称性破れに起因する磁気抵抗効果を用いた反強磁性ドメイン反転機構の解明などである。 これらの結果は学術的な新規性も高く、伝導系物質における電気磁気効果の統一的理解を目指す本研究の順調な進展を示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は主に、結晶構造や磁気構造、界面での空間反転対称性破れが非相反抵抗等の伝導現象にどのような影響を及ぼすかを研究してきた。これらの結果は本研究で提案した新規伝導現象が反転対称性の破れた結晶構造や磁気構造などと確かに結合し、それらの良い検出法であることを示している。次年度以降はこの結合を利用して磁気構造などを制御することを試みる。具体的には微細加工等を用いて高電流密度を印加することで、反強磁性ドメイン反転の実現などを目指す。
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[Presentation] 軟X線磁気円二色性による拡張磁気八極子の検出2020
Author(s)
木俣基, 雀部矩正, 山崎裕一, 栗田謙亮, 田端千紘, 横山優一, 小谷佳範, Muhammad Ikhlas, 冨田崇弘, 雨宮健太, 野尻浩之, 是常隆, 中辻知, 中尾裕則, 中村哲也
Organizer
日本物理学会 第75回年次大会(2020年)
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