2021 Fiscal Year Annual Research Report
ジグザグ反強磁性金属の「隠れた電流誘起磁化」が生み出す新規な電気磁気効果
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19K03736
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木俣 基 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20462517)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電気磁気効果 / 非相反抵抗 / 反強磁性スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属磁性体など伝導系物質における新規な電気磁気効果の開拓を主な目的に研究を行なった。最終年度は主にジグザグ構造を持つ反強磁性金属において、単結晶微細加工を用いた高電流密度下での伝導測定を行い、非相反抵抗が反強磁性転移温度以下でのみ生じることを明らかにした。これは局所的に空間反転対称性を破る反強磁性体における初の非相反抵抗の観測例と考えられ、大きな学術的意義を有する。さらに結晶の異なる位置での非相反抵抗の測定結果から、結晶の場所に依存して、非相反抵抗の大きさ、符号が変化することを観測した。この結果は、反強磁性磁気構造のドメインを反映したものと考えられ、これまで検出の困難であった反強磁性磁気ドメインの電気的検出の新原理を提案するものであり、スピントロニクス分野などへの波及効果も期待できる。
また最終年度以前に実施した実験として、時間反転対称性を破った磁気構造を有するカゴメ格子反強磁性体Mn3Snにおいて、X線領域の非対角光学応答に対応する円偏光磁気円二色性(XMCD)の実験を行なった。その結果、従来よく知られていたような、磁化を起源とするXMCDではなく、一種の多極子を反映したTz項と呼ばれる信号が強的に観測されることを実証した。これはMn3Snにおいて期待されていた拡張磁気八極子の秩序をTz項を通した観測できることを示すものであり、X線による磁性体の高次多極子秩序の新しい検出法を提案するものである。
また酸化物反強磁性体と白金の多層膜における空間反転対称性の破れた界面において、27Tまでの高磁場まで磁気抵抗測定を行い、反強磁性ドメインの反転機構を議論した。さらに、空間反転対称性を破った半導体において、非相反磁気抵抗の非自明な磁場依存性などを観測し、磁場によるフェルミ面の大規模な変化がその背景にあることを見出した。
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